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「……」
『…ごめんなさい、しのぶさん』
「何に対して謝っているんですか?」
『…湯飲み、』
「……」
『……』
そんなに大切な湯飲みだったのか、しのぶさんは処置に使った物をしまいながら「はあ」と息を吐いた。
『弁償…はお金ないから出来ないので何でもしますので、』
本当に反省してます。
前を見ていなかった事。
あの子にぶつかってしまった事。
挙句湯飲みを割ってしまい、しのぶさんに迷惑を…
「Aちゃん」
『は、はい…』
イスに座る私の前に同じように腰を下ろすしのぶさんは綺麗な瞳で私を見つめる。
「私は湯飲みを割った事に怒っているわけじゃありませんよ」
『え、』
「いいですか?火傷は跡が残ってしまうんです。もちろん他の傷もそうですが」
『……、』
「今日は運よく跡に残る事はないと思いますが」
『……はい、』
「痛いと思ったら自分を優先してください」
『でも、湯飲み…』
「湯飲みはどうでもいいと言いましたよね?日本語通じてます?」
『はい…、』
え、すっごく怒ってる…
いつでも優しい笑顔を向けてくれていたしのぶさんがこんなにも怒っているのは初めて見る。
もちろん笑顔のまま怒っているのだが…
それが余計に怖い…
「私が初めてAちゃんの傷を診た時もそうでしたが、あなたは自分に興味がなさすぎなんです」
『……う、』
「痛みに強いのかはよく分かりませんが、女の子なんですから体を大切にしてください」
体を大切に…
そんな事初めて言われた…
物心ついた時にはもう既に体はボロボロだったから。
だから多分しのぶさんの言った通り、痛みにはある程度耐えられたりする。
『でも、』と言い返そうとする私にしのぶさんは笑みを崩さず「でもじゃありません」とバッサリとぶった切るから口を噤む。
「いいですか?あなたに何かあれば周りの人も心配するんです」
『心配?』
「当然です」
『……当然、』
「はい。煉獄さんだって、Aちゃんに何かあれば心配しますよ。私だってそうです。心配をかけたいですか?」
『いいえ…、』
「それならもっと気を付けるべきです」
『…はい、』
「Aちゃんにとってきつい事を言ってしまったかもしれませんが、本当にそう思っているので」
『…はい、』
見るからに肩を落として落ち込む私に、「今度から気を付けてくださいね」としのぶさんは私の頭を撫でた。
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まあり(プロフ) - annkoさん» あああっ貴重な睡眠時間をっ…!?お礼を言っても伝え切れないです…!ありがとうございます!!お仕事、頑張ってください!! (2021年3月29日 16時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
annko(プロフ) - あれから睡眠よりも続きを!…と、全て読破させていただきました!午前中の仕事に若干支障が出ています(笑)。でもそれよりも、もうニヤニヤして最高の時間でした…煉獄さん本当にかっこよすぎです!更新楽しみにしています(^^)頑張ってください! (2021年3月29日 12時) (レス) id: 0cc2afaf00 (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - annkoさん» annkoさんはじめまして!あああっ…お暇がありましたらぜひぜひ読んでみてください!コメントありがとうございます…!嬉しいです!! (2021年3月29日 7時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
annko(プロフ) - こんばんは!はじめまして!素敵なお話をありがとうございます(^^) 煉獄さん…本当かっこよすぎて!お話の展開もとても好きです(^^)続きを全部一気に読みたいです!更新頑張ってください(^^) (2021年3月28日 23時) (レス) id: 0cc2afaf00 (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - まゆさん» わーーっ!!!嬉しいです!コメありがとうございます!とても励みになります〜! (2020年12月26日 16時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあり | 作成日時:2020年11月29日 19時