彼が消えて早5年。今私は...12【降谷零・安室透】

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「1人で、よく頑張りました。えらいね。それから、助けてくれてありがとう。快斗くんは私の、ヒーローだったよ。」





背中を撫でていた手を頭に移動させ、少しふわりとした快斗くんの髪を撫ぜればビクリと震える。そして、微かに聞こえた震える声。








「あんな事をしてたのに。ヒーローなんて、」







にあわない、よんでもらえるわけがない。







少し嗚咽の混ざったその言葉は自分を否定する言葉で。






「似合わないわけがない。あんなにたくさんの人に慕われている怪盗さんなんて快斗くんくらいだよ。助けられた人も沢山いる。そんな人達から見たら、快斗くんは十分にヒーローだ。それにね、快斗くんが...怪盗キッドがいる時は死人が出ないって噂が有名だったんだよ。





罪じゃないとは言わない。だって、理由が何であれ盗む事は良くないことだから。でも、本当に盗んだものは1つもない。全部返してるよね？






君のしたこと全てが悪いだなんて思わない。







だから快斗くん。赦されて、いいんだよ。君は、赦されるべきだ。」







ヒュッと息を呑む音が聞こえて、そしてポスリと肩に預けられた頭。暫くするとじんわりとそこが濡れてくるのが分かった。





「赦されて、いいの...？」






ポツリと囁かれたその言葉は幼い子供のようで、やはり無理をしていたんだろうと胸が痛くなる。そっと背中をさすりながら、いいんだよ。と笑いかければ強ばっていた体から力が抜け、それと同時に堪えていたであろう泣き声が少し大きくなった。





それを肯定するように、労わるように声をかけ続けて決壊したものが全て流されるのを待てば、泣き声が小さくなったのは零が出ていってから既に1時間を超えた頃だった。

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