第319話 ページ30
.
私もバケモノに憑かれた。
その言葉は淡々とAの口から紡がれた。
暮人のときのように、さして弱ったような様子は見られない。ただいつものように冷静な口調で事実を述べている。
「‥‥‥なんでお前が」
「私に興味があるんだってさ。予想外だからって」
「‥‥‥フェリドも、似たようなこと言ってたな。“死ぬはずだった”」
「うん。でも多分、それは関係ない。
死ぬ予定から外れたってのはフェリドの立場からで、
「‥‥‥そりゃつまり、お前が生まれた事自体ってことか」
Aは少し考え込み、「これはただの私の想像だけど」と前置きした。
「‥‥‥多分、鬼を宿さず“器”としてのみ生まれたこと───あるいは、“私”という
〈正解♪〉
頭の中で女の声が響く。
ずっと黙っていた
その視線は優しく、うっすらと笑みを浮かべていた。
〈すごいわA。ねぇ、グレンもそう思わない？〉
───‥‥全部知ってるんだろ、どうせ。
〈勿論。
本当はね、Aもちゃんと鬼と一緒に生まれてくる予定だったの。でもダメだった。
“器”としては完璧だったのに、なぜかダメだった。理由はわからないけど、おそらくこの子自身の問題よ〉
───Aの問題？
〈そうよ。
成功するはずだったのに失敗した。そんなこの子の存在は、確かに予想外でしょうね〉
「‥‥‥ン、グレン？」
顔を覗き込んでくるAは、「鬼と話してた？」と尋ねた。「視線が私を見てなかった。何見てたの？」
「何も」
「うそ。さっき鬼の“気”、強くなった」
「‥‥‥、チッ」
「何か言ってた？ 私のこと」
真昼は、口許に人差し指を立てる素振りをした。
「別に、何も」
「ふぅん。ま、仮に何か言っててもあんたがそれを教えるわけないよね」
間違ってないので否定はしない。
ただ、肯定もしない。
それはこいつもわかっているようで、その言葉はほとんど独り言に近かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 349人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏向(プロフ) - 朝陽さん» こちらこそありがとうございます‥‥！！！ (2022年10月2日 23時) (
レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
朝陽(プロフ) - 続きめっちゃ楽しみにしてました！ありがとうございます！ (2022年9月13日 23時) (レス) id: 2c0d85a97f (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - レモンはちみつさん» ありがとうございます！文章を褒めていただけると本当に嬉しくてすぐ調子乗ってしまいます(笑)気長に更新をお待ちいただけるとありがたいです…！ (2022年9月13日 23時) (レス) @page49 id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 仁奈さん» ありがとうございます！更新が本当に遅くて申し訳ないです…。気長にお待ちいただけるとありがたいです…！ (2022年9月13日 23時) (レス) @page49 id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
レモンはちみつ(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！一気読みしてしまいました。ワートリも終わセラも大好きなので嬉しいです！！書き方もすごく上手くて感情移入してしまいました、書き手として尊敬します！これからも頑張ってください！更新楽しみに待ってます！ (2022年8月14日 22時) (レス) id: 95afc2042e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏向 | 作成日時：2018年4月2日 10時
