02. ページ12
.
「そういうお前は恋愛とかしないの」
「え? 私が? ないです、ないない」
自身の顔の前で手をぶんぶん振るA。
生い立ちからしてそんなことに うつつを抜かしてる場合ではなかった、というのはわかるのだが。
「“こっち”来て4年でしょ。1つや2つはあるんじゃないの?」
「う〜ん、告白されたことは何度かありますけど」
「あるんじゃん」
「でもほとんど接点なかった人だし興味なかったし」
「うわ辛辣」
「だって何とも思ってない人と付き合うってなんか違うでしょ」
「お試しとかあるじゃん」
「時間の無駄ですね」
とことんこいつは恋愛というものに興味がないらしい。
このくらいの年頃だったら少しはあるのが普通なのだが、まぁ彼女の場合は普通なんてものとは縁遠い人生だった。
そのために価値観というか、そういうものに対しての意識の違いはあるのだろう。
「そういうの知っとくのも経験だろ?」
「性 欲に負けた男の対処法とか?」
「女子がそんなこと言うもんじゃありません やめなさい」
冷めている、とか達観している、とか言い方はいろいろあるだろうが、彼女は本当に物事に対して興味を示さない。示すとしても少しズレたところに対して、だ。
「私は多分、恋することなんてないと思いますよ。この先一生」
「‥‥‥‥‥」
「しようとしても多分別のことが邪魔して純粋に楽しむことはできないと思う」
私は刀振り回して戦場に身を置いてる方が似合ってますよ、と少し笑った。
「‥‥大丈夫だよ、人生はまだまだ長いからな。楽しいことはいっぱいある」
「‥‥‥。
‥‥‥なんか視てます?」
「さぁね〜。
まぁ1つだけ言っとくとしたら‥‥‥どんな人であろうが、どんな人生送ってようが恋していいんだよってこと、エリートさん」
「はあ。私は別にエリートでは」
「エリートだよ、十分。その分周りからの期待も大きくて大変だろうが、負けるなよ」
「負けませんよ。負けてたまるか」
「よし、その勢いで恋愛もたっぷりしておいで」
「意味わかんな‥‥‥。
‥‥‥あ、公平」
Aが声をかけると向こうから歩いてきた出水もこちらに気づき、おーA、と雑談を始める。
その2人を尻目に、おれはそっとその場を離れた。
彼女に届かなくても別にいい。陰から見守ってやるのもAに対する想いの1つだ。
Aが自分の本音に気づくまでは、おれの本音も出さないでおこう。
.
349人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏向(プロフ) - 朝陽さん» こちらこそありがとうございます‥‥!!! (2022年10月2日 23時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
朝陽(プロフ) - 続きめっちゃ楽しみにしてました!ありがとうございます! (2022年9月13日 23時) (レス) id: 2c0d85a97f (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - レモンはちみつさん» ありがとうございます!文章を褒めていただけると本当に嬉しくてすぐ調子乗ってしまいます(笑)気長に更新をお待ちいただけるとありがたいです…! (2022年9月13日 23時) (レス) @page49 id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 仁奈さん» ありがとうございます!更新が本当に遅くて申し訳ないです…。気長にお待ちいただけるとありがたいです…! (2022年9月13日 23時) (レス) @page49 id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
レモンはちみつ(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!一気読みしてしまいました。ワートリも終わセラも大好きなので嬉しいです!!書き方もすごく上手くて感情移入してしまいました、書き手として尊敬します!これからも頑張ってください!更新楽しみに待ってます! (2022年8月14日 22時) (レス) id: 95afc2042e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏向 | 作成日時:2018年4月2日 10時