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早速私の髪は、見知らぬ女性(小百合の方なのか時雨の方なのかは知らない)に黒く染め上げられた。鏡に写る自分は、別人のようだった。
(ああ、でも、睫毛とかはそのままだ)
特殊な髪色を持つ目立った子供は、ごくありふれた子供になった。
───さて。
今私は、広くて整理整頓の行き届いた部屋に1人残されている。内装からして、かなり地位の高い者が使うところのようだ。
「終わったか」
「女の子をひとりぼっちにするなんて、誘拐でもされたらどうするんですか」
「誰に?」
「例えばロリコン変態誘拐犯とか」
「はいはい黙れ」
「あなたが聞いたんでしょう?
───で、私から何を聞き出しますか? 姉の居所なんて知りませんよ」
すると、「やつの居場所は知ってるからいい」と言った。そして、聞いてもいないのに彼は言う。「──俺の、中だ」
そう言う彼を半眼で眺めた。「姉は死んだんですか? で、その存在がこの世から消えても俺の中では生き続けるって?」
「違う。そのままの意味だ」
─── 一瀬グレンが話したことは、にわかには信じられないことだった。
だが、人体実験を平気で行う呪術組織に生まれたのだから、受け入れきるのは遅くなかった。
「‥‥姉さんは、あなたに、《鬼》として存在していると」
「そうだ。随分理解が早いんだな」
「頭だけは小さい頃からいいんですよ」
「ほざけ」
「‥‥でも、なぜその話を、私に? おそらくあなたは、今まで誰にも話さなかったのでは?」
「‥‥あいつが話していいと言った。それだけだ」
彼の瞳の奥を覗いてみる。しかし当然ながら、姉の姿は見えもしない。だから、「カップル成立おめでとうございます」と言った。
「おまえは本当にむかつくな。どこかの誰かとそっくりだ」
「私は“おまえ”じゃなくて百夜Aです。
どれくらいの付き合いになるかは知りませんが、姉が絡んでるならどうせ長いんでしょ?
───よろしくお願いしますね、“一瀬グレン”さん」
◇
結局彼はロリコン誘拐犯などではなく、単なる仲間思いの愚直な人間だった。
一瀬グレンは、姉を殺した。しかし、私は彼にに命を救われた。
俺様で横暴でむかつくけれど、私は───あなたを家族だって、そう思っている。
姉の仇を家族だなんて、私もきっとバカなのでしょう。
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時