第255話 ページ27
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「‥‥それは、おまえが俺達を殺したいと思ってるからか?」
「いえ。しがらみを───仲間を殺してめちゃくちゃにすれば、解放されて楽になれるぞっていう鬼の誘惑です。男は殺せ、女は犯せ、ってね。そこに私の意思は関係ありません」
それは純粋な悪意だった。意識を刈り取り身体を奪って、宿主の大事にしているものを壊す。百夜が、一瀬グレンが、柊暮人が使っているのはそういう「力」なのだ。
「公平が目を覚ますのに時間がかかったのは、耐性のない身体で《鬼呪装備》の攻撃を受けたからだと思います。でも、本当だったらもっと目を覚ますのに時間がかかるか、最悪死んでたと思うんですけどね」
誰ともなしに、視線が出水へ向けられる。出水はじっと考え込むように俯いて、何かに思い当たるような顔をした。「‥‥おれ、おまえの刀に、触ったことある。‥‥Aが、最初に吸血鬼に殺されかけた時だ」
うん、と百夜が頷く。「トリオン体だったとはいえ、生身と全く無関係なわけじゃない。何かしらの影響があったとしても、おかしいことじゃありません」
そもそもトリオンと鬼呪の組み合わせなんて初めてなので謎も多いしあくまで推測ですけど、と彼女は付け加えた。「太刀川さんの疑問は、これで解消できましたか」
「‥‥いや、あと1つ」
一番気になっていたことだ。百夜は「鬼」を従えたまま、首を傾げる。
「‥‥おまえがそれ使って本気出したら、どれくらい強い?」
ぱちぱちと目を瞬かせて、彼女は呆れたように溜息をついた。「深刻な顔して聞くことが、それですか?」
「いや気になるだろ。なあ風間さん」
「‥‥否定はしないが、この空気でそれを聞くおまえの精神はどうなっている?」
同感です、と菊地原が頷いた。出水は何度も頷いているし、歌川は苦笑している。
「‥‥私が今刀を振ったら、少なくともこのフロアは壊滅します」
「‥‥まじで?」
「マジです。ついでに言えば、暴走すると数分でこの病院と周りの建物が崩壊します。巻き込まれて何人死ぬかはわかりません」
それは被害の程度を予想できないというより「巻き込まれすぎて数えるのは不毛」ということと同義に聞こえた。
「これだけ強い力なので、《鬼呪装備》保持者は暴走したら殺す決まりになっています。たとえそれが、仲間でも」
───もしそれが自分だったら、迷うことなく殺せるだろうか、と思った。
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時