第251話 ページ23
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「風呂入った？」
「寝汗だけ流した」
「なるほど」
「なんでわかったの？」
「なんかいつもと違う匂いする」
何それ、と彼女は若干笑い声を含んだ色で言った。
いつも通りだ、と思った。5日間も拷問を受けていたとはとても思えない。
長椅子に放り出されていた彼女の手をぎゅうと握れば、Aは少しだけ頭を壁から浮かせておれを見た。どうしたの、と言うように。それが堪らなくなって、彼女の身体を強く抱き寄せた。
「公平？」
「‥‥おまえを傷つけるくらいなら、確かにおれは柊暮人を殺すよ」
「‥‥あは、やっぱり」
「おれはあいつが気に食わない。やり方も嫌いだ。でもあいつのやり方は、今まで見てきた近界と、たぶん何も変わんないんだ」
「‥‥そう、かな」
「そうだよ。強者が上に立って、弱者はそれに従う。今までおれはその構図に特に何も感じてなかった。でも、その構図に自分が巻き込まれた瞬間、むかつくしクソくらえって思った」
「‥‥‥」
「‥‥なあ、やっぱり人間って自己中だよ。だって自分に無関係なことには関心がねぇくせに、自分に関わってくると急にそれが腹立たしく感じる。それまであった秩序をぶっ壊したくなる」
家族を守れるなら世界の平和も秩序も崩れていいと、彼女は言った。ああ確かにその通りだ、と思う。Aの爪一枚と世界を、平気で天秤にかけてしまえる。
きっと名も知らぬ他人の爪と世界だったら、そもそも比べたりしないだろう。考えるまでもなく後者を選ぶ。なんて愚かで美しい感情だ。
「‥‥私が死んだら世界が救われるってなったら、どうする？」
「おまえと一緒に死ぬか、世界を捨てる」
「‥‥‥ふ、はは。即答じゃん。もうちょっと悩みなよ、防衛員なんだから」
「その前におれはただの男子高校生だぞ。‥‥重い？」
「めちゃくちゃ。‥‥でも、嫌ではないから私も結構重いのかもね」
彼女の頭の重みが、胸元にかかる。ねぇ、と驚くほど小さな声がして一瞬聞き逃しかけるが、ん、と返す。
「‥‥キスしてって言ったら、怒る？」
「‥‥怒んねぇよ。理由がない」
身体を離すと、彼女は泣きそうな顔をしていた。その顔のまま「理由、ないんだ」と微かに笑うから、噛みつくように唇を奪った。項を抱き寄せて、ひたすら触れるだけのそれを何分も続けた。
彼女がキスをしたがった理由はわからない。それでもどうか、彼女を思うこの気持ちが伝わってほしいと願った。
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます！ (1月11日 21時) (
レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか？？ (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます！！見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください！！ (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです！ (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏向 | 作成日時：2017年10月10日 16時
