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第224話 ページ44

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〈こいつらのことは見捨てろ。でないと死ぬぞ〉

(ここで見捨てるの? 余計に怪しまれて終わりでしょ)

〈殺せ。そして暮人も騙せ。お前なら、それができるだろ?〉

(殺さないよ。もう黙って)

きっぱり言い放つと、嵐はつまらなさそうに沈黙した。


───中将は、なぜ呼び出すのにこんなにも時間をおいたのか?
単に忙しかったという理由ではないだろう。

(‥‥情報収集、か)

まずは太刀川さん達の身元と、背景まで調べようとしたのだろう。だが、この人たちは「こっち」では存在しない(・・・・・)人間だ。情報が残っているわけがない。結局呼び出して聞いた方が早いという結論に着地した線が濃いだろう。

そこまで思考したとき、ボンネット部分に嵐が すっと出てきてしゃがみこみ、愉快そうにこちらを見てくる。

隣の太刀川さんや後ろの公平たちには見えていないので、私だけ前方の視界を塞がれたようなものだ。


〈このままずっと塞いどいてやろうか?〉

「邪魔。事故るでしょ」





ぼそりとAが何かを呟いたが、助手席の太刀川さんが「何か言ったか」と聞き返しても誤魔化された。

バックミラー越しに見えるAの表情はずっと変わりなかったが、ふと、不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。───と、その瞬間、突然車が加速した。そりゃあもう、思いきり。かなりの加速度に身体が背もたれに押し付けられ、ヒヤリとした。

突然の乱暴な運転に「おい百夜、今のは何だ」と風間さんが声を尖らせる。

「すいません。悪魔が路上喫煙してたので、轢いてやろうと」

「あ、悪魔?ですか?」

「そ、悪魔」

歌川に応える彼女の顔はもう元に戻っていて、本当に何だったんだと項垂れる。無駄に緊張した。


「‥‥事故んないでくださいよ、先輩」

「へ〜きへ〜き」

「さっきから邪魔だの事故るだの、同乗者不安にさせないでもらっていいですか?」

「‥‥あ〜そっか、菊地原(あんた)には聞こえてたね‥‥」

はは、と笑うAには、おれ達に見えない何かでも見えているのだろうか。悪魔だなんて、この世界じゃシャレにならないからやめてほしい。


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夏向(プロフ) - るい酸性さん» 読み返していただきありがとうございます!6は現在改変中でして、土曜日中に全体公開する予定なのでもうしばらくお待ちください! (2023年2月11日 0時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
るい酸性(プロフ) - 久しぶりに読み返しました!6のパスワード教えて欲しいです! (2023年2月10日 17時) (レス) @page49 id: 825df6404c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏向 | 作成日時:2017年9月7日 19時

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