第213話 ページ30
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「‥‥あの、1個いいですか」
「いいよ、何？」
沈黙を貫いていた菊池原が初めて口を開いた。彼は少し考えるような素振りを見せてから、「あの時」と言った。
「先輩、門を発生させてこっちに戻ってきたんですよね。それ使ってこっそり帰ることはできないんですか」
確かに、と全員の視線が菊池原から私へ移る。その考えはもっともだろう。できるなら私だってそうしたいところだった。
「ちょっと難しいね。装置没収されちゃったから、今私の手元に無いの」
「戻ってくる目星は？」
「全くついてないね」
そうですか、と菊池原は引き下がった。期待に添えなくて申し訳ない気分になる。
ひとまずこの場は解散して、休んでもらうことにした。トリガーを解除した5人はあまり落ち着かなさそうだったが、あまり生活感のないこの部屋のせいでもあるだろうなと思った。ソファーやテーブル、椅子くらいで他に何か物が置いてあるわけではないから。
不意にインターホンが鳴った。玄関を開ければ町田一等兵が立っていて、「先程のことについて、指示が」と一枚の紙を渡す。
「ありがとう」
「いえ。‥‥しかし、本当に大丈夫なんですか」
「大丈夫、というのは？」
「あの者たちを大佐の自宅に置いておくなど、危険ではないですか？」
その心配は当然のものだろう。吸血鬼でもなく、集落から逃げてきた人間でもない。
彼らにとっては本当に「正体不明」なのだ。太刀川さんに至っては腰に弧月を差していたから、他の4人も武装していると考えるのは自然である。
「‥‥仮にあの人達が私を襲ったとして、負けると思ってる？」
「いえ、そういうことでは‥‥」
「そうでしょう。あなた達が心配することは何もないから、このことはもう気にしないようにと他の隊員にも伝えておいて」
「わかりました。出過ぎた発言をしてすみません」
彼は礼儀正しく頭を下げて、失礼しますと去って行った。その背中を見送ってしっかりと施錠し、部屋に戻る。
会話を聞いていたのか、太刀川さんが「今の俺達総出で攻撃しても、おまえには勝てないのか？」と尋ねた。純粋な疑問だろう。
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夏向(プロフ) - るい酸性さん» 読み返していただきありがとうございます！6は現在改変中でして、土曜日中に全体公開する予定なのでもうしばらくお待ちください！ (2023年2月11日 0時) (
レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
るい酸性(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！6のパスワード教えて欲しいです！ (2023年2月10日 17時) (レス) @page49 id: 825df6404c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏向 | 作成日時：2017年9月7日 19時
