第207話 ページ22
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何が起きたのか、全くわからなかった。
近界遠征では、遠征艇のトリオン補給のために道中の星で何度か停泊する。そうして今回もいつものように、降り立った星が補給するのに安全な地かどうか偵察をしていたのだ。
しかしそこはこれまで見てきたどの星とも違って、荒廃し人の気配は全くなかった。
地下に入ればこの星の住民らしき者たちと出会ったが、どうも様子がおかしい。そして彼らから聞いた言葉に、おれたちはどうやらここは近界ではないらしいということに思い至ったのだ。
吸血鬼という単語はおれたちにとって聞き逃せないものだった。まさか、とそれぞれが同様の予測を打ち立てた時、「それ」は来た。
戦闘は即座に決着がついた。それは敵の一方的な蹂躙とも言え、なす術なく地面に押し付けられるしかなかった。
風間さんが吸血鬼と話をしているが、胸糞悪くなる言葉ばかりが聞こえてきて苛立ちがつのる。通信からは柚宇さんや冬島隊の声が聞こえたが、正直どうしようもない状況だ。とにもかくにもまずはこの拘束を解かなければ撤退もできない。
八方塞がりのように感じた時、風間さんを押さえつけるそれの後ろに何かが降り立つ。いや、降り立つと言うより、現れた、の方が表現としては合っているかもしれない。
刀を持った女は、吸血鬼も含むおれたちが呆気にとられている間に全ての敵を殺してしまった。
刀を鞘に収めた女は、目深にかぶっていたフードに手をかける。結われた黒髪が現れて、二、三度頭を振るのに合わせて揺れた。
「‥‥‥」
声すら出なかった。通信機の向こうでは息を呑むような音が聞こえた。
「無事ですか」
そう言う彼女は地面に片膝をついて、風間さんに問う。「迅さんに何も言われなかったんですか」
「‥‥ああ」
そうですか、と女は───Aは、少し目を伏せた。
風間さんが立ち上がると、それに倣って膝の土を払う。
「‥‥風間さんたちには、来てほしくなかったんですが」
「不可抗力だ」
「ええ、わかってます」
頷いて、彼女はくるりと背後に控える者たちを振り返る。「任務中断。1班は残って半径1キロの警戒、2班は報告に」
了解、という返事と共に散開して、この場にはおれたちだけが残された。
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夏向(プロフ) - るい酸性さん» 読み返していただきありがとうございます！6は現在改変中でして、土曜日中に全体公開する予定なのでもうしばらくお待ちください！ (2023年2月11日 0時) (
レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
るい酸性(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！6のパスワード教えて欲しいです！ (2023年2月10日 17時) (レス) @page49 id: 825df6404c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏向 | 作成日時：2017年9月7日 19時
