今日こそは(宮治) ページ42
私の会社の近くには最近話題のおにぎり屋さんがある。
お店を継いだ息子さんがイケメンだと話題になり、女性客が急増しているとか。
私も以前は通っていたのだが、最近は混んでいて全然行けていない。今日のお昼も行けなかった。が!今日こそは行く!何がなんでも!残業なんてしない!
そして待ちかねていた終業のチャイムがなった。
私は光の速さで支度をした。
『お先失礼します!』
元気よく挨拶し、小走りで会社を出た。
おにぎり屋さんの息子さん、今みたいに人気になる前はお店で談笑することもあった。けれど行かなくなってから少し経ってしまった。もう覚えていないだろうか。
私は駆け込むように「おにぎり宮」へと入る。
「いらっしゃいませ〜」
そう緩く言ったのは息子さんだった。
大きな背丈に少し低い声。
歳は私と同じくらいだろうか。
私は前と同じように明太子と鮭のおにぎりを買おうと、ショーケースの中に目をやった。
『あっ…』
「どないしました?」
『いえ、なんでもないです』
私のお気に入りの2つはもう完売してしまっていた。
仕方ないと思い、私は代わりのおにぎりを選んでいた。
「お客さん、明太子と鮭のおにぎり探してるんとちゃいます?」
彼は屈んだ私にそう言った。
私は慌てて起き上がった。
『な、なんで…!』
「なんでも何も、お客さんうちの常連さんやないですか。最近めっきり来おへんから心配してたんですよ」
いつもはあまり笑わない彼だけれどこの時だけは少し微笑んでいた。こちらに向けた彼の背中に、私はほんの少し胸が高鳴った。
「今日こそは来るかなと、毎日お客さんの分だけ取っておいたのに」
そう言ってこちらに向き直った彼が出したのは、小さなおぼんに乗せられた明太子と鮭のおにぎりだった。袋入れますね、と再び背を向けた彼。私は口を開いた。
『私、新田っていいます。新田A』
彼は動きを止めてゆっくりと私の方を見た。
私は彼の反応が気になり、じっと彼を見つめた。
「へぇ〜、ほなAさんて呼びますわ。俺の事も治て呼んでくださいよ」
ね?Aさん、と悪戯に微笑む彼に私は心を奪われた。
『毎日来てもいいですか?』
「……もちろん、毎日Aさんのだけ取り置きしときますよ」
「A、そろそろ開店するで」
『準備出来てんで!』
「『いらっしゃいませ…!』」
3年経った今では、薬指にキラリと指輪を光らせ、おにぎり宮の看板娘(仮)をしている。
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まる - 泡姫さん» お時間かかっても全然構いません…!!むしろリクエスト叶えていただけるだけですごく嬉しいです…!続編をお気に入り登録しておきます…!!!!!! (2月18日 15時) (レス) id: 649d507a41 (このIDを非表示/違反報告)
泡姫(プロフ) - まるさん» わー!リクエストありがとうございます!久しく書いていないため少しお時間頂いてしまうかもしれませんが、私なりに書かせていただきます!!現在こちらの作品は続編の方を更新する形になっておりますので、よろしければそちらをお気に入り登録してお待ちください! (2月18日 12時) (レス) id: 5951de0be4 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作者さんにリクエストが…。銀.島.結.で過去の辛かったことを銀が全部包み込む…みたいなお話を書けたりしますでしょうか…?(語彙力なくてすみません…) (2月18日 11時) (レス) id: 649d507a41 (このIDを非表示/違反報告)
オレンジさん - 好きで愛してるわ作者さんじゃなくてさ、作者様じゃね?(は?何言ってやがるオレンジさんや) (2022年7月10日 21時) (レス) @page48 id: 0e3c42be20 (このIDを非表示/違反報告)
泡姫(プロフ) - 愛菜さん» そういう素直で分かりやすいお言葉が1番嬉しかったりします……今後も緩く書いていきますので時々キュンとしに来てください…!(ちなみに現在次話執筆中です…) (2021年11月6日 11時) (レス) id: 8284d2d1b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泡姫 | 作成日時:2021年9月1日 21時