壁の向こう側【rtrt】

36話 ページ36

真っ白な空間、薬品の匂い。
目を覚ましてから、ここが病室だと理解するのに時間はかからなかった。




「いたた…｣

「Aちゃん！起きたか！｣




首を強く絞められたせいで喉は痛いし、身体中も悲鳴をあげてなかなか起き上がることが出来ない。
ガッチさんに手伝ってもらいながら、やっとの思いで起き上がるとガッチさんがいつの間にかグズグズと泣いていた。





「え、ガッチさんの泣いてるとこ、初めて見た…｣

「ははっ、涙脆いんだよ実は｣





ガッチさんの頭を撫でると、ガッチさんも私の頭を撫でた。いつもと変わらない撫で方なのに鼻の奥がぐっと熱くなった。





「俺も初めて見たー」

「ガッチさんの涙は俺グッときちゃうわ｣





声がした方に目を向けるとたくさんの果物とマリーゴールドの花束を持ったキヨさんと牛沢さんがいた。
2人は私の姿を見て少し驚いた顔をしたが、無理に何があったか聞こうとしない。やっぱりガッチさんの友達はいい人ばかりだ。




「派手にやられてんなあ｣

「スイカ！持ってきたぜー！｣

「あはは、ありがとう2人とも。またゲームしようね｣

「早く元気なってくれよ〜」

「次は勝つぞ！｣




左にはレトさんが私のお腹に頭を乗せて手を握って眠っている。





「…また泣いたの？｣




つられ泣きって言っていいのか分からないけど、涙のあとをなぞると手から伝わる温もりでこの人の元に帰ってこれたんだと堪えていた涙が急に溢れてきた。

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