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5話 ページ6
ハッと顔をあげれば、目の前にいた黒髪の男性。肌、白い。さっき見た時は寝てたのに、いつ起きたのだろうか。
それでもまた触れられた感触で我に返る。ガクガクと足が震え、冷や汗が頬を伝う。涙がこぼれ落ちる前に。
「あっ…た、すけて、くださ…っ」
私が小さな声でそう呟いたのを合図に、男性は表情を変えて私の腕をつかむ。そしてそのまま立ち上がり、私を椅子に座らせた。
「座っててください」
あまりにも素早いその行動に、ひとり唖然とする。周りの人もちらほらとこちらを見ていて、反射的に俯いてしまう。
そして私を庇うように、先ほどの男性が目の前に立つ。つり革を持ち、私から痴漢男性が見えないようにしているのか。さすがに考えすぎだろうか。
それでも男性が、子供の頃に見たヒーローと重なって見えて。
どうか、この人が私より先に降りませんように。
今はただ、そう願うばかりだった。
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作者名:なえ | 作成日時:2017年9月14日 17時