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29話 ページ30

「…Aっ!」




「…あ!彼方さん!…と、まふくん?」




「あ、いや、さっき電話出れなくてごめんね?」




電話が終了してから彼らが来るまでは、そんなにかからなかったと思う。




「お前顔赤くね?体調悪いって、熱あんの?」




「あー…計ってはないんですけど」




「はあ…無理すんなよ、まじで心配した」




真っ先に駆け寄ってきた彼方さんに質問される。実は上司に計らされていて、思っていたより高かったなんて言えない。




「…えへへ、ごめんなさい」




「ほら、車行くぞ」




「…はい…っ、あ」





彼方さんに腕を掴まれて一歩一歩を踏み出す。しかし体は限界のようで、そのまま後ろへ傾いていく。ぐらつく視界に、頭も痛くなってきた。




「っと、Aちゃん、大丈夫…?体熱い、相当あるでしょ…」




後ろにいたまふくんにそっと包まれ、そのままぐったりと彼にもたれ掛かる。どうしよ、声、出ない…




「彼方さん、Aちゃんもう無理っぽい。そのまま病院行きましょう」




「はあ…どんだけ無理してんだよ…。わかった、病院までよろしく」




「任せてください!」




彼らのそんな声も、だんだんと遠ざかっていった。

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作者名:なえ | 作成日時:2017年9月14日 17時

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