ききまちがい ページ9
ある日、私は街角で占い師の老人に出会った。
その占い師はその人がいつ、どんな死に方をするのかを占うと言うのだ。私は興味本位で自分の死因を聞いてみることにした。
すると老人は禍々しい手つきで何やら魔具を弄り、ブツブツと呪文のような言葉を唱え始めた。
そして、か細くしわがれた声で二言ぼそりと呟いた。どうやら私は三年後の七月七日に溺れて死ぬらしい。その時の私はその事を本気にしておらず、大して気にもしていなかった──。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
月日は流れ、私が死ぬとされる日がやって来た。さして気にしていなかった私だが、改めて意識し始めると途端に不安が募り始めた。一応念の為、万が一ということもあるし、何もしないよりはマシだろうと考えて、私はあらゆる可能性を考慮し、対策を講じることにした。
その日は一切の飲み物を口に入れず(水分は果汁多めの果物を取ることにした)、風呂に入らないのはもちろんのこと、水場の近くには近づかないようにした。恐れるべきは「液体」で、それ以外で死ぬことはない。まあこれもその占いが当たっていると言う前提なんだけど⋯⋯。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私は今、家の外に出て、歩いて移動している。
本当は外を出歩くのは危険なのだが、どうしても外せない用事ができてしまっていた。
命には変えられないと思うだろうが、生き延びるのを仮定するのであれば外すことはできない、そんな用事であった。
でも実際はどうなのだろうか? 向かう先の近くに川があるが、近づくつもりは毛頭ない。車に乗る予定もないから、運転手が突然気絶して、制御不能になり川に突っ込む、なんて事もない。車に轢かれて吹っ飛んだ先が川だった、とかの方がまだ可能性としてありそうだ。もっともその場合、死因は別になりそうだが。
⋯⋯ん?
まてよ⋯⋯⋯⋯そうか、やばい! その可能性があった! やっぱり外に出るんじゃなかった。
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作者名:稲穂 | 作成日時:2021年4月8日 15時