不思議な男 ページ31
あと10分ほどで真夜中になる時間帯に、私は特急電車に乗っていました。
やがて、途中の駅で一人の男が乗り込んできたんです。
その男は、電車のドアが閉まると、突然我に返ったように乗客の顔を見回し始めた。
「すみません。28歳ですか?」
男が私に話しかけてきた。
「そうですけど、どうしてわかったんですか」
私が聞き返しても、男は無視して、また別の人に話しかけた。
「あなたは45歳ですか?」
「そうですけど……。」
「あなたは62歳ですね?」
「どうしてわかったんだ?」
そんなやり取りを繰り返していました。
どうやら、その男には、顔を見ただけで年齢を当てる特殊能力があるらしい。
次の停車駅までは、まだ15分以上ある。
私を含め、乗客たちは全員その男に注目し始めていました。
「あなたは51歳ですね?」
「あと5分で日付が変わったら51歳なので、今はまだ50歳です。」
最後に質問された女性は、笑顔でそう答えました。
あと5分とはいえミスをした男に、周りの乗客はなんだかほっこりしていました。
けれど男の顔が、その途端に青くなったのです。
男は、あせって時計を見る。
すると、男は青い顔を私に向け、こう言いました。
「…私が見えているのは貴方がたの寿命です。」
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作者名:稲穂 | 作成日時:2021年4月8日 15時