. ページ37
.
「本物はどこにいる」
中尉の表情が
微笑みから一転、蛇のような目付きに変わった
睨みつけられ、動くことができない
『寧一郎…弟は、意識不明の重体で…目を覚ましません』
「なに？」
「ほぉ…」
月島と鶴見中尉の声が重なる
驚くのも無理はない
「それで…弟の代わりで来たとでも言いたいのかね？」
『はい…女性が軍にいるなんて有り得ないことだと重々承知しています。それでも私は弟の鶴見中尉への意志を継ぎ、ここへ来ました…
弟がこんなくだらない金塊争いに巻き込まれて死ぬぐらいなら私が代わりになります。』
そうだ、こんな地獄に弟を帰らせてなるものか
絶対にこの金塊争奪戦を終わらせて、寧一郎を守らないといけない
「……」
『…絶対に帰りませんから！』
ああもう撃たれてしまう
そう思い、ギュッと目をつぶった
だけど中尉は大声で笑い始めた
「くだらないぃ〜！？そうか！！
そうだよなぁ…たしかに女性には正義なんぞ理解できんだろうなぁ…」
「しかし度胸のあるお姉様だ……自らが犠牲となり弟の身を守る…素晴らし〜い兄弟愛だ…」
鶴見中尉の目元が、キラリと光る
鼻をすする音がやけに嘘くさい
「感動した！！いいだろう！！お姉様はここに残るといい！！……だが！！！！」
『ヒィッ…』
わざとらしい演技をしていたかと思えば、私の胸ぐらを掴み、グッと顔を寄せ
「その代わり腕が吹き飛ぼうと、足がちぎれようともその命が散るまで私を守り私のために戦うと誓いなさい。……それが貴様の弟の願いだ」
そう冷たく言い放った
「この条件が呑めないのなら、弟の脳ミソを掻き回し叩き起してでもここへ連れ戻す…
どうだ？自分の手を汚してでも弟を守れるか？」
逃げ道は完全に断たれてしまった
この男からは絶対に逃げられないだろう
「返事をなさい」
『はい…』
満足そうに中尉は笑った
「いい子だA……本当に賢い子だ、あぁ、可愛いな」
愛おしげに頬を撫でる中尉の手は冷たくて
私はまた、尾形を思い出してしまった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ゴールデンカムイ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
芝(プロフ) - 鮭マヨさん» コメントありがとうございます。とても励みになります…(;_;)これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年9月13日 1時) (
レス) id: ac408ee6ee (このIDを非表示/違反報告)
鮭マヨ - この作品ほど更新が終わってほしく無いと思ったの初めてです…更新めっちゃ楽しみにしてます…！ (2021年9月11日 8時) (レス) id: 9536630108 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：芝 | 作成日時：2021年8月31日 2時
