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「なっ…」
なんのために
そう言いかけた口を鶴見中尉の人差し指が制する
女がここに居ていいわけない、今すぐ追い返して北里寧一郎を呼び戻して諸々の責任を取らせなくてはいけない
北里姉弟に対する怒りよりも先に
気づいていながら傍観していた中尉に、腹の底からふつふつと怒りが湧いてくる
男だらけの場所に放ったらかしにして、もし女だとバレたらどうなる
危険すぎるだろう！
何を考えているんだこの人は！？
掴みかかりそうになるのを必死で堪える
「落ち着きなさい月島」
「…准尉を、いや、彼女をどうするおつもりなんですか」
発した自分の声が存外低く響き、
あぁ、感情とは声によく出るものなのだと再認識する
もしかしたらもう誰かにはバレているかも知れない
尾形の顔が浮かぶ
いくら今の准尉が絡みやすくなったからといって、容易く近づくような性格ではない
なにか面白いことがあるからに違いない
その“面白いこと”なんて、1つしかないだろう
頭が痛い…
「北里准尉のお父上が、東京大学病院の院長なのはおまえもよく知っているだろう？」
鶴見中尉が囁く
「母方のお爺様は誰か知っているか？日本銀行総裁だぞぉ…」
視界の端でニンマリと不気味な笑みを浮かべているのが分かる
「姉の北里Aは英国の医大に留学していたそうだ…弟の代わりに父を継ぐために…
あぁ…
なんという愛溢れる自己犠牲の精神だろうか…そう思うだろう？」
そうか、なるほどな
なんだかもう笑えてくる
軽蔑を通り越し、畏敬の念すら覚えてくる
「…ですが女性が軍にいるのは身体的にも精神的にもキツイものがあるかと」
「心配ない！私は彼女のことをよく知っているからね！」
その言葉にゾッとした
この人は一体いつから…
.
.
「そうか…尾形とは何もない、と…」
『…はい』
中尉は尾形が造反を目論んでいることをもうとっくに気づいていた
きっと利用価値のある准尉が尾形側につくことを恐れているのだろう
「じゃあ尾形は…」
「鶴見中尉、なにやら騒がしいです」
中尉が次に口を開いた時、微かだが遠くの方から怒号が聞こえてきた
杉元を監 禁している部屋の方角からだ
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芝(プロフ) - 鮭マヨさん» コメントありがとうございます。とても励みになります…(;_;)これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年9月13日 1時) (
レス) id: ac408ee6ee (このIDを非表示/違反報告)
鮭マヨ - この作品ほど更新が終わってほしく無いと思ったの初めてです…更新めっちゃ楽しみにしてます…！ (2021年9月11日 8時) (レス) id: 9536630108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芝 | 作成日時：2021年8月31日 2時
