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「馬鹿っ、おい！ちゃんと歩け」
『歩いてるから！』
結局、私達はお互い真っ赤になるまで酒を飲んで
すっかり人気の無くなった道をフラフラしていた
道の端に寄せられた雪山に何度も足を突っ込む私を引き寄せる尾形
そんな尾形も若干フラついてる
もう全部がおもしろくて仕方ない
「ったく…おまえ酷すぎるぞ、もう絶対俺以外の前で酒は飲まん方がいい」
『なに〜嫉妬かい？尾形上等兵〜』
「人助けだ、馬鹿な飲兵衛上司から部下を救ってやるんだ」
『……』
「…おい、なんだよ？吐きそうなのか」
黙りこむ私の顔を覗く尾形
え、心配してるの？
あの尾形がぁ？
『うっそ〜！びっくりし…』
「おい！危ねえ！！」
『うわぁ！？』
揶揄ってやろうと顔を上げた瞬間、腕を勢いよく引かれそのままバランスを崩した私達は雪山に倒れ込んだ
何事かと思えば、馬橇の音が静かな町に響いてる
あっ…ぶつかりそうになったの助けてくれたんだ…
後ろから来てるのに
『…全然気づかなかった…馬…』
「馬鹿野郎」
馬だけに…
うわくだらない
くだらないのにおかしくて笑っちゃう
アルコールで頭がバカになってるんだきっと
『ふふふ、あはっダメだごめん…ふふ、』
「なんなんだよ…」
『はぁー…楽しいね』
寝転んだまま、体を右へ向けると
尾形もこちらを見ていた為、顔を見合わせてしまった
…なんか照れくさい
雪が厚い軍服を通して冷気を伝える
その冷たさが火照った身体に心地よくて眠ってしまいそうになる
「おい…」
薄ら目を開け、尾形の大きな瞳と
視線がかち合うと
もうその瞬間から
目が逸らせなくなる
ゆっくりと尾形の顔が近づき、私に影を落とした
あれ…私なんで瞼閉じてようとして…
そう思った時にはもう遅くて
暖かくて柔らかな感触が
私の唇を包み込んだ
今のって…
まともに認識もできないまま、その柔らかさは離れ
目が合う
「ふっ、酒くせえな」
『…最低』
笑う尾形の表情はいつもより柔らかくて
なんだか軽口も許せてしまう
脱げた軍帽から覗く私の前髪を撫で、目を細めた愛おしげなその視線は
今まで向けられたことのないものだった
だけどそんな穏やかな時間は長くは続かない
「尾形上等兵が小樽の川岸で瀕死の状態で発見された」
非番明けの朝、そんな怒号と共に私は起こされた
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芝(プロフ) - 鮭マヨさん» コメントありがとうございます。とても励みになります…(;_;)これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年9月13日 1時) (
レス) id: ac408ee6ee (このIDを非表示/違反報告)
鮭マヨ - この作品ほど更新が終わってほしく無いと思ったの初めてです…更新めっちゃ楽しみにしてます…！ (2021年9月11日 8時) (レス) id: 9536630108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芝 | 作成日時：2021年8月31日 2時
