第五話 足りないもの ページ19
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「准尉殿、また1人で行かれるのですかぁ？」
『うるさいな…どっか行け！』
夜遅い、暗い暗い宿舎の階段の踊り場
桶を持った私の行く手を阻む人物は一人しかいない
「私とも湯浴みに行きましょうよ」
『どけ、尾形上等兵』
懐かれてしまったのか、あの日から尾形は異様に私に絡んでくるようになった
いや懐かれたんじゃない
これは私を弄って遊んでるんだ
いけ好かない奴め…
人の居なくなった今の時間帯しか風呂に浸かれるチャンスはないのに…
邪魔するな！
一緒に入れるわけないでしょうが！
ニヤつく尾形を押しのけ…ようとしてもビクともしない
分厚い胸板にむしろ跳ね返される
「今日も見張っててやってもいいぞ？」
耳元で囁かれ、ぞくりと肌が栗立った
人前では敬語で話すくせに、2人きりの時は私に舐めた口を聞くこの男が憎たらしい
『…き、今日も頼んだ』
私がそう言えば尾形はそれはそれは満足そうに見下ろすのだ
「北里准尉、今日外に飯食いに行きませんか？」
剣術の訓練後、三島が汗を拭きながら声をかけてきた
爽やかな笑顔に充てられて、こっちまで笑顔になってしまう
『行く行く〜他にも誘おうか？』
よく飲みに行く野間や二階堂兄弟たちの顔が浮かぶ
どうせ暇だし誘ってやろ〜
「あっ…いや、今日は…」
三島が照れくさそうに目をそらす
「ふ、2人きりは気まずいでしょうか…」
『えっ』
むむむ！？
三島の耳が赤い
こ、これは…！！私に恋してる！？
いやいやまさか！！！
ふふ、自分で想像しときながら面白いや
今の！私は！男！北里寧一郎！
『全然構わないよ、着替えたら行こうか！』
なにか相談事でもあるのかな？
二階堂たちがいたら話せないよね、あの人たちすぐ茶化すしふざけるもん
分かる。
前山が振られた時、散々酒を飲ませた挙句
女装させた谷垣を紹介して笑い倒していた時の光景がフラッシュバックした
前山泣いてたなぁ…
ゲンジロちゃん…
『三島ぁ！待たせてごめん！』
先に支度の済んだ三島は私の自室の前で待っていてくれたらしい
ちゃんと腕を腰元で組んで、直立する姿はとても凛々しい
「いえ！大丈夫です！」
私にはそんな気を使わなくていいのに…
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芝(プロフ) - 鮭マヨさん» コメントありがとうございます。とても励みになります…(;_;)これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年9月13日 1時) (
レス) id: ac408ee6ee (このIDを非表示/違反報告)
鮭マヨ - この作品ほど更新が終わってほしく無いと思ったの初めてです…更新めっちゃ楽しみにしてます…！ (2021年9月11日 8時) (レス) id: 9536630108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芝 | 作成日時：2021年8月31日 2時
