手記漆頁目 ページ9
「おい、A。隣の道場の彼奴が来たぞ。」
部屋で編み物を嗜んでいると、袴姿のお兄様が少々乱暴に襖を叩いてそう言った。
『はい、お兄様。わざわざありがとうございます。』
鏡台で身嗜みが乱れていないか確認して、自分の部屋から出る。
「もう、隣の奴と関わるのはやめろよ。」
襖の前にはまだお兄様が立っていて、そう顔を嫌悪に歪めながら私に言った。
何故、お兄様……いや、私の家族が隣の家を嫌うか。
理由は、私の生家である剣道場とその隣にもう一つ道場があり、一方的に私の家族が隣の道場の方を恨み、嫌がらせをしていることに理由がある。
私は、幼い頃から隣の道場の慶蔵さんの娘である恋雪ちゃんと仲良くさせてもらっていた。
恋雪ちゃんは、小さな頃から体が弱くて室内で二人でお話をしたりあやとりをして遊んでいた。
恋雪ちゃんの父でもある慶蔵さんは、とても強く、優しい人で何故父や兄達はこの道場を、この人を嫌って憎んでいるんだろうかと不思議だった。
今まで私は、その事については父や兄にも賛同せずしかし、慶蔵さんたちを庇えば父達に叱られると思い中立の立場を保ってきた。
狛治さんと出会う前までは。
いつも通り恋雪ちゃんの所へ遊びに行くと、慶蔵さんともう一人、見たことのない人が恋雪ちゃんの布団の横に並んで座って会話をしていた。
『慶蔵さん、恋雪ちゃんこんにちは。』
私がそう声を掛けると恋雪ちゃんは花を咲かせたように笑顔になり、慶蔵さんは柔らかに微笑んでくれ手招きをしてくれた。
ここで、初めて狛治さんと私は出会った。
黒髪に色素の薄い長い睫毛、着物の上からでも分かる鍛えられた体。
だがしかし、顔も所々怪我や腫れが凄く、鼻血も出ているようで処置はせず、詰め物をしているだけだった。
そして、羽織の袖から除く入れ墨。
その視線に気付いたのか、慌ててその方は袖を伸ばしてその痕を隠した。
恋「Aちゃん!今日も可愛いわね!」
恋雪ちゃんは今日は比較的元気な日なのか、私の姿を確認するととても嬉しそうに笑ってそう言った。
『ありがとう、恋雪ちゃん。慶蔵さん、そちらの方は……?』
慶「ああ、門下生として新しく迎えたんだ。……外で暴れていたが中々筋が良いやつなんだ。」
狛「狛治……だ。」
『私はAです。』
これが、私と狛治さんの出会いだった。
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主人公(プロフ) - まゆまゆさん» 本作品を見つけて頂きありがとうございます!私も映画見る前はそうでした笑是非ともこれからもご愛読頂けると嬉しいです(^^) (2021年3月26日 15時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - やぁ〜、猗窩座とのお話しを探して三千里(はっ?)なかなか書いてらっしゃる方居なくて、見付けたら嬉しくて善逸みたいに汚ない高音でイィヤァァァア〜状態w自分無限列車何も知らずに観に行って猗窩座の第一声で石田彰さんて解って涎垂らしそうな程で、幸せ (2021年3月26日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます。やっとこさ1を書き終えました。続編も近日公開致しますので是非ともこれからも応援お願い致します! (2021年3月18日 18時) (レス) id: 1c0023d245 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 初めまして!この作品大好きで、ずーっと更新をお待ちしてたので嬉しいです!!!はくじさんと早く会えますように( ; ; )最後どうなるのか気になります!! (2021年2月21日 7時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年1月9日 5時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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