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手記参拾参頁目 ページ35

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「もう、隣の奴と関わるのはやめろよ。」





父上に言われて強く妹にそう言う。





だが、妹は俺にも目もくれず隣を通り過ぎて家を出ていった。





木刀を握っている右手を強く握り締める。





本当は、こんな態度をとってしまいたくないのに。





本当は、きちんとお前の事を応援してやりたいのに。





父上から言われたとはいえ、例え父上から妹を守るためとはいえ、可愛い妹に強く厳しく接するのはいささか心が痛む。





ああ、お天道様。なんて残酷なんでしょう。





あの青年と出会ってしまった妹は更に大人に、残酷な程美しくなった。





けれど、そんな妹の最後に笑った顔を見たのは花火大会へあの青年と仲睦ましげに話し歩を進める妹達を門の影で見送ったのが最後だった。





今、俺の目の前にいる妹は昨日の妹とは見違えるほどだった。





あんなに綺麗に着付けた浴衣もはだけて、髪は崩れて髪飾りが落ちかけている。





涙を流したからか化粧の崩れた顔には、昨日赤々と妹の唇を彩っていた紅より目から頬へと流れる乾いた涙の筋と酷い隈が目立っていた。





光を取り入れるのを絶やさなかったその瞳には微塵の光さえ写していなかった。





一夜で変わり果てた妹は、姿だけ変わり果てた訳では無かった。





『もう……もう良いんです。私はきっと父上からは逃げられませんから。』





妹の言葉に何かを言おうとしたものの喉から言葉を紡ぎ出すことが出来なかった。





あまりにも、酷く儚く微笑む妹は今にでも消えてしまいそうだった。





妹になんとか食事をさせ、逃げるようにお盆を下げて妹の、部屋から立ち去る。





あのままあの部屋に居ると己の不甲斐なさに打ちのめされそうになるからだ。





「本当に……駄目な兄さんだな、俺は……。」





この家を取り巻く暗い空気は関係ないと言わんばかりの青々と輝く空を見上げて目を細めた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 猗窩座 , 狛治   
作品ジャンル:恋愛
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主人公(プロフ) - まゆまゆさん» 本作品を見つけて頂きありがとうございます!私も映画見る前はそうでした笑是非ともこれからもご愛読頂けると嬉しいです(^^) (2021年3月26日 15時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - やぁ〜、猗窩座とのお話しを探して三千里(はっ?)なかなか書いてらっしゃる方居なくて、見付けたら嬉しくて善逸みたいに汚ない高音でイィヤァァァア〜状態w自分無限列車何も知らずに観に行って猗窩座の第一声で石田彰さんて解って涎垂らしそうな程で、幸せ (2021年3月26日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます。やっとこさ1を書き終えました。続編も近日公開致しますので是非ともこれからも応援お願い致します! (2021年3月18日 18時) (レス) id: 1c0023d245 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 初めまして!この作品大好きで、ずーっと更新をお待ちしてたので嬉しいです!!!はくじさんと早く会えますように( ; ; )最後どうなるのか気になります!! (2021年2月21日 7時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年1月9日 5時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:主人公 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年11月9日 21時

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