手記拾肆頁目 ページ16
狛治side
その涙を拭う前に咄嗟にAさんのことを力いっぱい抱き締めた。
俺に少しでも迷惑が掛からないようにと涙を流しながらも、嗚咽に言葉を遮られてもAさんはあの弱々しい笑みを浮かべていて、そんな顔を見たくなかった。
狛「大丈夫です。俺が絶対にAさんの手を掴みます。……絶対に離しません。だから、泣かないで下さい。」
俺が出来るだけ優しくそう声掛けると、それを皮切りに俺の胸の中で声をあげて泣き始めた。
俺はただひたすらAさんが落ち着くまで震える小さな身体を抱き締め、赤子を慰めるように一定の間隔で背中を優しく叩いてやった。
落ち着いてきたようで段々とAさんの呼吸も泣いた事でしゃくりあがっていた肩も落ち着きを取り戻していた。
『あ、あの……』
俺の腕の中にいるAさんが顔を下に俯かせたまま小さくか細い声で俺に話し掛けた。
狛「何でしょうか。Aさん。」
Aさんの言葉に耳を傾けると、俺の胸を弱々しくぐっと押しながら
『は、恥ずかしいので離してもらってもいいですか……。』
と言った。
泣いた事で乱れたAさんの髪の間からちらりと見えた耳は赤く染まっていて、それを見て俺は慌ただしく離れた。
慰めるためとはいえ、俺は先程までAさんをこの腕でずっと抱き締めてしまっていた。
狛「すっ……すみません……。」
二人して顔を背けて、沈黙の時間が過ぎていく。
『ありがとうございます……狛治さん。』
少しばかり気まずくなっていた空気を切ったのは、Aさんだった。
『狛治さんのお陰で沢山泣けたし、人混みも狛治さんが居ればきっと大丈夫な気がしてきました。』
そう話しながら乱れた髪を手櫛で整えて、耳に髪を掛ける仕草をするAさんに胸が掴まれたように苦しくなる。
『狛治さんに抱き締めてもらってる時、凄く嬉しかったんです。温かくてとても安心出来て、ずっといたいなってくらい。本当にありがとうございます。』
そう月明かりに照らされて笑うAさんは、今度こそ綺麗な裏のない笑顔を浮かべていた。
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主人公(プロフ) - まゆまゆさん» 本作品を見つけて頂きありがとうございます!私も映画見る前はそうでした笑是非ともこれからもご愛読頂けると嬉しいです(^^) (2021年3月26日 15時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - やぁ〜、猗窩座とのお話しを探して三千里(はっ?)なかなか書いてらっしゃる方居なくて、見付けたら嬉しくて善逸みたいに汚ない高音でイィヤァァァア〜状態w自分無限列車何も知らずに観に行って猗窩座の第一声で石田彰さんて解って涎垂らしそうな程で、幸せ (2021年3月26日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます。やっとこさ1を書き終えました。続編も近日公開致しますので是非ともこれからも応援お願い致します! (2021年3月18日 18時) (レス) id: 1c0023d245 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 初めまして!この作品大好きで、ずーっと更新をお待ちしてたので嬉しいです!!!はくじさんと早く会えますように( ; ; )最後どうなるのか気になります!! (2021年2月21日 7時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年1月9日 5時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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