【５月 � � ページ8
side 紫
今日は、阿部ちゃんと照は病院に行っている。
阿部ちゃんが、一緒に住むようになった最初のころ、
毎日、具合悪くなるから心配になって。
みんなで探して、良さそうなところを見つけた。
俺は行ったことないんだけど、いい先生たちらしくて。
今日も学校のこと、相談してくるんだって。
お昼に家に戻ると、 もう２人は帰ってきていた。
岩本「お疲れ」
深澤「おう、照もお疲れ」
病院で疲れたのか、阿部ちゃんはソファで寝ている。
岩本「今日、午後からも休んでいい？
ちょっと亮平と話したいことがあって」
深澤「うん、もちろん」
side 黄
みんなが仕事に戻ってから、寝ている亮平を起こして。
昼ごはんを食べたら、テーブルを挟んで向かい合う。
岩本「あのさ、病院で、先生と話したことなんだけど」
俯いた亮平が、小さく頷く。
勝手に涙が出たり、気分が悪くなったりするのは、
身体が助けてって言っているサインなんだって。
どうやら、俺たちが考えていた"少しずつ"が、
階段を一段飛ばしで駆け上がるような感じだったらしくて。
もっと小さい階段を１段ずつ、ゆっくりねって言われて、
亮平も、それなら頑張れそうって、頷いていた。
岩本「明日の夕方、俺、学校行くんだけど、
亮平も一緒に行かない？」
顔を上げて、涙でいっぱいの目が俺を見る。
阿部「明日？」
俺は１週間に１回くらい、亮平の学校に行って、
配布物をもらったり、今後の相談をしたりしていて。
制服も着なくていいし、俺も一緒にいるし、
学校に入れなければ、車で待っててもいいし。
岩本「ちょっと急だけど、 一緒に行ってみよ」
できるだけ、小さな階段にしたつもりだけど、
それでも、まだ悩んでいる。
阿部「先生、怒らない？
ちゃんと学校来なさいって言わない？」
岩本「うん、それは大丈夫。
先生たちも、分かってくれてるからさ」
阿部「んー……」
両手で涙を拭いながら、一生懸命考えている。
阿部「行けたら行く、でもいい？」
岩本「うん、もちろん」
まだ泣き続ける亮平に、ティッシュを差し出した。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
