【４月 桃】 ページ7
side 黄
コンコン
岩本「佐久間、入るぞ」
夜更かしをして寝坊の多い佐久間のことだから、
今日もそうだろうと思って、部屋に入る。
岩本「そろそろ起きないと、遅刻するぞ」
頭まで布団にもぐっているから、
バサッとめくってやると、佐久間は丸まっていて。
肩を揺すって、顔をのぞき込むと、
その顔は涙でいっぱいだった。
岩本「あ、ごめん」
慌てて布団をかけ直し、そっと頭をなでる。
クルリとこちらを向いた佐久間は、まだ泣いている。
佐久間「ちょっと、昔の夢、見ちゃって」
何かのキャラクターが描いてあるタオルを握って、
涙を拭いながら、ぎこちなく笑う。
岩本「無理に笑わなくていいから」
佐久間「うん」
この間、亮平に話してくれたから、
昔のこと思い出させちゃったんだな。
岩本「どうせ、あんまり寝てないんだろ。
薬、持ってこようか」
佐久間「うん、お願いしていい？」
リビングに下りて、佐久間の様子を伝えて。
最近、あまり使うことのなくなっていた、
佐久間の薬と水を持って、部屋に戻る。
起き上がった佐久間は、慣れた手つきで薬を飲み、
もう一度、布団に横になる。
佐久間「ありがと」
岩本「寝るまで、ここにいるから。
もし、気分悪くなったら、教えて」
久しぶりに飲むし、副作用が強く出るかもしれない。
そう心配していたけど、無事に眠れたようだった。
岩本「佐久間、寝たよ」
深澤「あ、寝られた？良かった」
たまにあることとはいえ、久しぶりだったから、
俺もふっかもドキドキしていた。
仕事中もこまめに様子を見にいくことにして、
とりあえずは、俺たちも事務所に行く。
お昼すぎまで眠り続けていたけど、
起きたら、だいぶ落ち着いたようで。
阿部「さっくん、大丈夫？」
佐久間「うん、いつものだから、大丈夫だよ。
心配してくれて、ありがとう」
亮平が一緒に暮らし始めてからも、何度かあったし。
詳しいことは説明していないけど、
亮平なりに、何か思うところがあるのかもしれない。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
