【４月 �◆� ページ4
side 紫
入学式以降、阿部ちゃんは、まだ一度も学校に行けていない。
入学式の日は、保健室に行けたって聞いたから、
このまま少しずつ行けるようになるといいなって。
みんな、そう思っていたんだけど。
毎朝、起きてくるときから泣いてしまって。
岩本 「泣くほど辛いなら、行かなくていいんだよ」
阿部「ううん、学校行く。 頑張る」
心配そうな顔の照が優しく声をかけても、
休みたいとは言わないんだけど、涙は止まらない。
朝ごはんもいらないって言うけど、
照が、食べないと休ませるって言うから。
時折、浮かぶ涙を拭いながら、涼太が作ったスープを飲んで。
それでも身体は正直だから、家を出るまでに、
お腹が痛くなって、戻してしまう日が続いている。
そんな毎日だと、阿部ちゃんも辛いだろうし、
どうしたらいいのかと、照は、頭を悩ませていた。
今日も、泣きながら起きてきた阿部ちゃん。
阿部「ひーくん……」
涙を拭いながら、照に話しかけて。
でも、言葉が続かなくて、黙ってしまった。
岩本 「どうした？」
照が顔をのぞき込むと、また涙がこぼれる。
阿部「あのね、えっと……、
今日、お休みしたい、です」
岩本「うん、分かった。連絡しとくな」
照は、少し驚いた顔をしたけど、
すぐに笑って、阿部ちゃんの頭をなでていた。
お休みできるってことに安心したのか、
すぐに泣き止んで、笑顔も戻って。
朝ごはんも泣かずに食べられて、
お腹が痛くなることもなかったみたい。
お昼ごはんを食べて、ソファで寝てしまった阿部ちゃん。
午後の仕事が始まる時間になって、
照が困った顔で、阿部ちゃんを見ている。
深澤「どうした？」
岩本「いや、今日さ、やっておきたい仕事があって。
でも、亮平を1人にするの心配だから」
照は、阿部ちゃんを休憩室に運ぼうとしているけど。
深澤「ちょっと待ってて」
事務所に走って、他のみんなに事情を説明する。
深澤「だから、誰か照の代わりに、
阿部ちゃんに付いててあげてほしいんだけど」
みんな、それぞれスケジュールを確認して、
手を挙げてくれたのは。
宮館「えっと、俺で、よければ」
意外にも、涼太だった。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
