陸拾肆──すもも ページ19
.
錆兎
息災だろうか。活躍を耳にすることはないが、うまくやれているのだろうか。この春に義勇が柱になったことは知っているだろうか。錆兎の実力はどれほどになったのだろうか。
先日、真菰を最終選別に向かわせることにした。ぜひ会ってほしい。錆兎の顔が見たいと言っている。
鱗滝
「なんだ、手紙か？」
ひょこ、と現れたのは彼の相棒──瑪瑙である。すっかり葉を落としてさびしくなった木が、寝起きのあくびをする鳥を肩に乗せて、屋根上の二人を見ている。
「ああ、鱗滝さんから」手紙を見せながら「水狐になるってそれぞれ報告しにいったとき、見ただろう？ 一緒にひきとられた孤児の」
「真菰、か」
「そう」
錆兎が面をはずしてうなずくので、Aもならった。
「じゃあ会いにいく？」
「ああ」
隊服である袴から普段着に着替え、二人は山奥の質素な家を訪ねた。
「錆兎です、帰りました」
言いながら戸をたたくと、
「はーい」
どこかふわりとした、温かみのある声が返ってきた。
「わ、錆兎だ！ 鱗滝さん、錆兎……と」Aに目をやり、「恋人さんが帰ってきたよ！」
「「恋人っ！？」」
ちがうの？ 真菰はきょとんとする。二人が恥ずかしくてなにも言えないでいると、奥から天狗の面が姿を現した。
「しばらくだな。上がるといい」
「あ、ありがとうございます」
「おじゃまします……」
この香り。この家の香りがなつかしくて、錆兎はふしぎな気持ちになった。炉をかこみ、温まりながら、不服そうな真菰に弁明する。
「俺たちは水狐だ。恋人とかじゃなくて、二人組！」
「とかいいつつ？」
「真菰……」
しつこい少女に錆兎は頭をかかえた。
「そうだ真菰ちゃん、最終選別で気をつけてほしいことがあるの」
Aが向きなおった。
「私たちが選別から帰ってきたときにも伝えたけど、藤襲山には異型の鬼がいる。だから、あの鬼を見かけたら絶対に逃げるって約束して」
「体は木よりも大きくて手がたくさんついてるから、見ればすぐにわかるはずだ」
錆兎もつけくわえた。真菰は「うん」と返事をする。と、
「藤襲山に異型の鬼……」
スモモ──独立、幸福な日々、甘い生活、誤解、困難
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (
レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました！ (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです！これからも更新楽しみにしてます！ (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Rabbita | 作成日時：2022年1月1日 19時
