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伍拾玖──やまぶき ページ14

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 新緑深まる六月。梅雨のじっとりとした暑さにもかかわらず、畑本八作はきっちりとスーツを着ていた。
 あの冬の日に手紙を直接受けとってから一度もAと会えていない。当たり前だが七日間はとうに過ぎている、あろうことか半年も経った。手紙がないのはいったいどういうことなのか。まさか、なんて考えたくないが、なかばあきらめている自分もどこかにいる。憂鬱な気分のまま新聞を受けとるために門外へ出た。
「毎度どうも。いやあ、また暑くなってきましたねえ」
「まったくです、日が長いのは助かりますが、虫が多くて困ります」
 本当本当、とすこし言葉を交わして、新聞屋を見送る。
 戻ろうと門を開けると、「欅条様!」と呼びとめられた。声の主は郵便配達員だ。屋敷に入る前のちょうどよいところに来てくれた、外へ出る二度手間がはぶけるので今日は運がいい。
「ご苦労様です」
 帽子をとって礼をし、配達員はせわしなく次の家へと向かっていった。
 新聞を主人へ渡す前にかならず行うのは、手紙の送り名の確認だ。
「山野様、角名様、白木様……」
ない、ない、ない。やはり今日もないか、八作は小さく肩を落として希望なく最後の手紙を見る。
 送り名がない。これだ、表を見てみると、たしかに“畑本八作様”と書かれていた。
「A様……!」
 この手紙だけを胸ポケットへしまい、ほかを主人へ渡して、八作は自分の部屋へ向かった。
 封を開けて手紙を読む。


ヤマブキ──気品、待ちかねる、崇高

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設定タグ:鬼滅の刃 , 錆兎 , 長編   
作品ジャンル:恋愛
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Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました! (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです!これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rabbita | 作成日時:2022年1月1日 19時

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