# 『 もう一度 』 ページ49
*
どんなに愛されても満たされないのは何故だろう
どんなに想っても想われないのは何故だろう
” なぁ……もしかして、Aを守るために付き合わなかったんじゃねぇの？ ”
あの日から、私はあの言葉に囚われている
北山くんの発したその一言、河合くんの何か言いたげなあの表情
全部全部が、私の脳裏にこびり付いてそして離れないんだ
A藤ヶ谷くん、お会いしたいです。
身体中に散りばめられた無数の赤い痕を見ても、それは満たされなくて
更に渇いた心は、満たしてくれるものを求めて一時的な愛へと逃げる
そんなことしても逃げられないのに、一生
彼とこうして2人きりで会うことも私から誘うことも、とても久しぶりだった
懐かしいこの胸の高揚感、高校時代を思い出す
彼がデビューしてから、そして私がSnowManに加入してからめっきりと空いたその距離感
ぽつんと取り残されたような孤独感
そうだ、私はいつだって独りだった
一人じゃないのにずっと独り
藤ヶ谷「 お待たせ、待った？ 」
私の前に現れた愛しい彼からは、あの時と変わらない大好きな香水の匂いがした
バニラのような爽やかな香り、私はこの匂いを知っている
だって彼に初めてプレゼントした香水がこの匂いだったから
「 藤ヶ谷くん、 」
苦しい、苦しいよ藤ヶ谷くん
私はただ愛情が欲しかっただけのに、それなのにどうして複数の愛情ではなく、たったひとり特定の愛情を求めてしまうようになったのだろうか
ホテル街の路地裏に2人で佇む
周りには誰もいない、そこはまるで異空間
何とも表現しづらいだけど嫌じゃないその空気が、私と藤ヶ谷くんの間をするりとすり抜ける
夜空に煌めく星が興味津々といった様子で私たちをギラギラと照らした
運命の歯車が今、大きく動き出す
「 藤ヶ谷くん。もう一度、私のことを抱いてください。 」
私はあなたの心に触れたいです
そして願わくば、あなたが抱えていた本当の気持ちを教えてください
藤ヶ谷くんは私の言葉にゆっくりと頷いて
そしてホテルのドアが私たちを出迎えた
*
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作者名：FON
| 作成日時：2020年8月8日 11時
