ともくんの

or× シチュー ページ6

or

「あっくんっ、…ごめんなさい」

「…」

そもそも俺の味付けに文句言うたんが悪い。
美味いってみんな食うてくれたから、
もんちにもって思ったのに。

「これ嫌。」

なんて言うて食べずに一言。
流石に俺もイラって来たけど別に怒ることでもない。
せやから

「一口だけでも食べてみ？美味いから。」

そう言うと渋々口に運んで無表情。
なんそれ。
自分の方が料理美味いから？
俺の味付けやったら気に食わんわけ？

「…嫌。」

そう言ってスプーンを置いた。
これには俺も我慢ならん。

「ほんなら食わんでええ」

そう言ってエプロンを外してソファに腰掛けた。

仕事終わりの神ちゃんは疲れた様子やったから
俺でよければと思って料理作って待ってたんや。
せやのになんや？本人は。

帰ってきてからも不機嫌。

料理見てもなんも言わん。

ましてや、口もつけへんなんて。

そんな気に食わんのか。

携帯を見れば淳太くんからの誘い。

「「飯、行けへん？」」

今はもんちとおるのもしんどいし、出かけるか。
カバンを手に取ると、

「「行こや。どこで呑む？」」

そう打ちながら玄関へ向かうと
まだテーブルに腰掛けていたもんちが慌てて追いかけてきた。

「どこ、行くん…っ、」

びっくりした顔で俺に近づいてくる。
何言うてまうかわからんからすぐに目を逸らして
靴紐を結び直した。

「…淳太くんとこ。」

「なんでっ…俺もっ、」

「飯、食わんねやろ？」

「食べるっ、食べるからっ…！」

「ええって。置いといてくれたら俺帰ったら食うし」

「俺も行くっ、」

カバンを走って取って来たと思えば、前で抱え出した。
なんやねんそれ。さっきまで下向いてたくせに。
俺もイライラしてんのかうまく靴紐が結ばれへん。

「来んとって」

「嫌っ、」

「イライラする。顔見たないねん。」

「…っ、ごめ、なさぃ…」

そう言うとペタペタと床音がして数歩下がった。
下に向けた顔を見るとぎゅっと口を結んでいる。
もちろんかばんを抱きしめたまま。

「もんち？」

「いってら、っしゃい…」

顔を歪めたまま、涙が溢れないように目に力を入れて
ぐっと堪えている目は隠し切れないくらい真っ赤で。

「…おいで。」

そっと腕を広げるとパッと顔を上げてすぐに飛び込んできた。

「あっくんっ、…ごめんなさい」

「…」

俺の背中に腕を回してシャツをぎゅっと握った。
小さいモンチはすぐに俺の腕の中におさまってしまう。



続

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