ともくんの

rd× 俺じゃなくても ページ5

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「今日飲みに行かん？」

こんな誘いなかなかなくて、ほんまに嬉しかった。
何も考えず、うんって、返事して楽屋を一緒に出た。
しげから誘って貰えることなんかほぼないもん。
しげへの気持ちに気づいてから俺から誘うこともなかったし、
今回だってほんまに久しぶり。

「なあ、一回でええからちゅーさせてや。」

こんなことになるなんて思ってなかった。
俺の気持ち知らんからって、踏み捻られた気分。
なんでって？

「俺、次ベッドシーンの撮影あるんよ」

2人ともお酒が入って熱くなったんか、仕事の話ばっかり。
ふとしげが言った言葉が俺からすればちょっと嫉妬。
でも俺の気持ちなんか知らんからすらすらと
シゲの口から出てくる言葉に俺の心ん中はぐちゃぐちゃ。

キスシーンがあるなら俺は絶対見いひん。

「だから練習させてや。神ちゃんで」

「えっ、」

「ここでいいから、一回だけ」

「んっ…/」



" 練習 "


" 神ちゃんで "


" ここでいいから "



あぁしげは俺のこと仕事でしか見てないのに。
こんなに苦しいなんて。
分かってたことやのに、諦めの悪い俺はもしかしたらって。
そんな淡い希望なんてすぐ消えるんやけどな。

「んー、ようわからんわあ、」

「…そっか。まあ女の人ならもっと柔らかいかもな」

「そう？神ちゃんもだいぶやらかいで？」

「そっか、」

「うん。なあ、もっかいしていい？」

「えっ」

「ええやん。別に。減らへんやろ？」

「…っ、」

吐き捨てられた言葉が何度もこだまする。
たしかに減らへん。
でも、好きな人にそんな風に言われるのが悔しかった。

男であることにこんなに後悔したことはない。

「…神ちゃん？」

「へっ！？あ、うん…、どうぞ、」

「ごめん、そんな嫌やった？泣かんといて？」

「えっ…」

慌てて頬を触るとすごく濡れててびっくりした。
止まるどころかどんどん溢れてくる。

「あれ…、なんで、俺…」

「神ちゃん、泣かんといて。なあ…
　俺神ちゃんに泣かれたらどうしたらいいかわからへん。」

しげが俺の頬に手を滑らせて拭ってくれても
止まらない止まらんのはなんでなん？
いきなりぎゅーっと抱きしめられてしげの匂いが濃くなる。

「神ちゃん、ちゅー嫌やった？ごめんな」

「んーん、」

「ごめん、もう頼まんから」

「…」

「まあ、淳太か小瀧くらいならやらしてくれそうやしな！」

「…そ、やな」

そっと離れて涙を拭いた。

「俺じゃなくてもいいもんな」

続

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