ともくんの3

rd× バター4 ページ22

「もんち」

「あっくん！！」

目の前で恋人がさ、メンバーに抱きついて
甘えてたら、めちゃくちゃ嫌やない？

でも俺、伝え方なんかわからんから見てるだけ。

「なあ、あっくん、今日お泊まりしたい！」

「今日〜？ええけど、帰り遅いで？」

「待ってる！ご飯作って！」

は？なにそれ。
神ちゃん、俺は？一緒に帰ろうや。

付き合っててもそんなこと言わんかったか。
ってかそもそも誰かと付き合ってる記憶はあるんやろ？
それはどこにいったん？

照史ってことになったわけ？

「そーいや、神ちゃん。
　付き合ってた人はどないなん？」

「あー、連絡こうへんのよ。
　それに写真とかもなくて。
　なんかみんなの写真はたくさんあるのに、
　貰ったものもないねん。だから俺の思い違いかなあ」

濱ちゃんがきいつかってくれたのに本人はケロッとしてる。

「そうなん？ほら、なんか好きやった時の記憶とかは？」

流星が小瀧の頭を撫でながら尋ねると、
嬉しそうに笑ってから、眉を下げた。

「それがなあ、向こう俺のこと好きやなかってん。
　愛されてなかったのは覚えてるの」

「えっ」

思わず声が漏れてしまった。だって俺は愛してたし、
なんならほんまに好きで好きでしゃあないし。
今もまた恋人に戻れるなら戻りたいもん。

「いつも怒られてばっかりやった。
　隣の隣は恥ずかしいみたいで、
　よく他の人と比べられてたんよ。
　…なんで付き合ってくれてたんやろ」

へへへ、と笑った神ちゃんは、照史はそんなん言わんもんなって
笑いながら照史の笑窪を白い指でなぞった。

比べてたわけじゃない。
ただ照れ隠しのつもりで名前使って…、
隣だって一緒に歩いたら照れちゃうし、恥ずかしいってそんな意味じゃ…
…伝わってなかったんや。何一つ。
でも神ちゃんは我慢してくれてたんや。
わかったのにもう遅い。
神ちゃんは今は照史がええんや。
あんな風に笑って、甘えて、幸せなんや。

「そっか、じゃあ忘れて正解やな！」

「しげっ！」

「…？うん、そうかも！シゲたまにはええこと言うやん!」

濱ちゃんの泣きそうな顔は俺も泣きそうになる。
でもこれ以上に俺は寂しい思いをさせてたんや。
今更神ちゃんの写真に変えたって、
プレゼント用意したって、遅いんやから。

「あ、そやそや！これ、知ってる…？」

神ちゃんが思い出して見せてきたのは
破かれた沢山の手紙やカード？

「家のゴミ箱に入ってたん。誰が捨てたんかなあ、
　書かれてるのは全部俺の字っぽいねん」

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