世界はロックンロークで満ちている (ページ9)

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9．誰にでも古傷はあるでしょうページ9

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絶句した。

ていうか、え？あれ昨日の人だよね？え？人違い？

でも初めましてって言うんだから別人なのか、はたまた大人の対応をしているだけなのか。とにかくこの綺麗な顔した女性が月島Aさん。もっと大人の女性が来るのかなと思ってたけど、まだ20歳そこそこの女の子って感じで、意外だった。

「遅れてすみません。本日はわざわざお越しいただいてありがとうございます。久保さんですよね、私が岬に代わってご連絡させていただいておりました有栖です。ジェジュンは久しぶりね。元気だった？」

混乱のさなかバーンとドアを開けてペラペラと饒舌に話す美女は、ニッコリ笑ってウインクまで飛ばしてくる。有栖さん、全然変わってないなあ。

その迫力にびっくりしている久保くんは置いといて、俺は自然に右手を差し出していた。

「お久しぶりです。有栖さん、相変わらずお綺麗ですね」

「随分言うようになったじゃない。あなたも格好良くなって。あれからもう10年経ったんだものね」

力を込めてしっかりと握られた右手から伝わる思いがなんだか懐かしくて、有り難かった。

「ジェジュンさんと有栖さんはお知り合いだったんですか？」

ずれた眼鏡を直してマネージャーらしく状況整理する久保くん。の、様子をじっとうかがう月島さん。

「私がいまの会社に移って来る前にいた会社が彼らのレーベルでね、まあたくさん面倒見て来た弟たちってとこかしら」

「有栖さんに振り回された思い出の方が多いですよ」

「やだこの子ったら、おほほ」

一通り談笑を終えて、本題に、と話は移っていく。

「今回の曲なんですけど、作曲はご希望通り岬が、作詞を月島が担当した点はご了承いただけたということで宜しかったですよね」

「はい。それは大丈夫です。歌詞も気に入って。それで、聞きたいことがあったんですけど」

「月島に？」

「はい」

月島さんに緊張が走ったのがわかった。

「あの歌詞、何を思って書いたんですか」

「、、生きることに対する絶望と希望を、失礼ながらジェジュンさんをイメージして書きました」

「それが全部ですか？」

押し黙る月島さん。この曲を昨日受け取ったとき、本当に俺のことを書いたんだなって思ってた。きっと、色々調べて想像して「ジェジュン」という人間を作り上げて。

「あなたの経験も入ってるんじゃないですか」

でも、俺の為というだけでは酷く悲しすぎる。