三十 ページ32
前言を撤回しよう。
長次がいれば大丈夫って思っていた私が馬鹿だった。
そう考えてしまう程に目の前に置いてある粥は得体の知れない色をして、明らかに異臭を放っていた。
数十分前
私達は食堂にて粥と昼食を作っていた。
粥担当は私と小平太、昼食担当は仙蔵と長次である。
たまに私達三人が小平太の様子を見ては暴走を止め、なんとか食べられる物が出来てきていた。あとは火にかけて待つだけだ。
ちょうど昼食担当の二人も作り終えたらしく、長次達が盆にのせて持ってきた沢山の握り飯の中から小平太が一つ取って私に投げた。
私が一口食むと、美味しいお米の味が口いっぱいにひろがった。うん、絶妙な塩加減
(形は完璧な三角だけど、些か握る力が強いからか固い……仙蔵のやつだな)
この学園の生徒、特に六年生は性格がきれいなくらいバラバラだ。
だから握り飯の握り方一つとっても個性があって、食べればなんとなく誰のものか分かってしまうのである。
因みに美味しさだけで評価すれば、上から長次・仙蔵・留三郎・文次郎・小平太・伊作の順になる。
そして下位二人は基本、台所には入ってはいけないことになっているのだ。
だからなのか、久しぶりに台所で料理を作っている小平太はとても楽しそうだった。
鍋の前で完成を今か今かと待っている小平太の姿は、まるで犬の様である。
七松「そういえば、仙蔵は文次郎に粥など作ってやらなくてよかったのか?」
仙蔵「今は何も胃に入れたくないそうだ。薬も後から飲むと言って飲まなかったしな」
『あー……留三郎と一緒ですね……』
仙蔵「所詮あいつらは同属嫌悪だ」
全くその通りである。
『……でも、文次郎の方が扱いやすいので助かります』
仙蔵「そうか?」
『思ったことをそのまま口に出すところは一長一短ですけど、留三郎と違ってあまり冗談言わないので』
仙蔵「ほう……例えば?」
『そうですねぇ………先程は“苦い薬を飲む際気分が下がるので、口移しが良い”みたいなことを言ってましたね』
「「「は?」」」
私がそう言った瞬間、三人は凄まじい形相で此方を見た。
(こ、怖い……)
七松「A、お前それホントにやってないよな?」
『いや流石にやってませんよ』
七松「お前ならやりかねん」
小平太は私に詰め寄ってきて私の目を真っ直ぐ見ながら言った。
皆私を何だと思ってるんだ。
仙蔵「……よし、留三郎シメるか」
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時