上級生の紅一点は、無愛想。《第一章》【RKRN】 (ページ30)

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二十八「馬鹿は風邪ひかない」ページ30

予算会議が終わった次の日

私は忍たま長屋にある伊作と留三郎の部屋に訪れていた。

水に濡らした布を絞り、伊作の額にのせる。

伊作「すまない、Aちゃん……ｯﾍﾞｸｼｮﾝ」

『大丈夫です。それよりも早く治してください』

昨日からまた風邪が悪化したようで、伊作は布団から動けない状態だった。

何故二人部屋なのに私が看病しに来ているかと言うと、

留「っ…だりぃ……ｯｹﾞﾎ」

伊作の風邪がうつって、同室の留三郎共々寝込んでいると言う訳なのだ。

『ほら、やっぱり風邪なんですから薬飲んでください』

留「いや、俺は風邪などひかないっ！そんな脆弱な身体じゃ、……ｯｸﾞｼｭ」

『完璧に風邪です』

そして動けないにも関わらず、留三郎は自分は風邪ではないと言い張って一向に薬を飲もうとしないのである。

さて、どうやって飲ませようか……

『留三郎……』

留「なんだ？」

『馬鹿は風邪ひかないんだそうですよ』

留「だからそれがどうしたんだよ」

『つまり＿＿＿留三郎は馬鹿ということになりますがよろしいですね？』

留「ほあッ？！」

『よろしいんですね？馬鹿留でよろしいんですね？」

留「………………飲む」

(やっぱりコイツチョロい)

留三郎ってプライド高そうだからワンチャンいけるかなって思ってたら、いけた。

それにしても、こんな手口に本当に引っかかる奴がいるとは驚きである。

留「っ苦ぁ……ｯｹﾎｯｺﾞﾎ」

『良薬は口に苦しです』

留「でもよぉ……飲み方によって気分も変わってくるだろ？」

『まあ確かに、何かと混ぜて良い薬なら砂糖や黒蜜と一緒に飲むというのもありでしょうけど』

留「それもそうだが……口移し、とか」

『…………恋愛喜劇(ラブコメ)でも見ましたか？』

明らかに熱で頭おかしくなってる。

留「……って冗談だ、冗談！お前がどんな返しをするのか見たかっただけだ」

『口移しはしませんよ。口吸いみたいで恥ずかしいですし』

留「ほう……お前でもそれくらいの知識はあるんだな」

『どれだけ私のこと馬鹿にしてるんですか』

茶番はこれくらいにして、私は二人の粥を作るために部屋から出た。

(さて、無難に卵粥でも作るかな)

＿＿＿＿＿
【No side】

Aが部屋から去った後、伊作が衝立から顔を出した。

留「なんだ伊作、起きてたのか」

伊作「留三郎……冗談も程々にね」

その時の伊作の顔は世にも恐ろしいものだったと、後の留三郎は語った。