拾壱 ページ12
「なんでそこまで気づいちゃうかなぁ…
シルクの言う通り、私は管理人なんかじゃない。今まで黙っててごめん。
私もシルクたちと同じように、夏を繰り返してる。何年も。」
やはり思った通りだった。
「だったら、なんで俺たちには帰れるって言ったんだよ。
その方法があるんだとしたら、お前はとっくにここから出られているはずだろ？」
俺の問いに彼女は、寂しげで辛そうな表情を浮かべながらこう答える。
「私は無理なんだ。あまりにもここでの時間を重ねすぎて、此岸から遠ざかってしまったから。」
「そんな…」
「でもいいんだ。
私さ、初めてシルクたちに出会った日、本当はすごく嬉しかった。
ずっと繰り返してきた夏の中で、今回ほど満たされた夏はない。
私は、この場所でなきゃ、『空蝉』でいられないから。
だからお礼とお詫びを込めて、君らを此岸へ帰す。」
そう言って彼女は笑った。
ほんと、こいつも嘘がつけねぇな。
わかってて言ってんのか？
俺は空蝉の目を見つめ、神妙な面持ちで口を開く。
「お前さ、それ隠せてると思ってんの？
ずっと、辛そうにしながら無理して笑ってること。」
「何言ってんの！私は何年も此処にいるんだよ？こんなのもう慣れて…」
「嘘だね。本当に慣れてるんだとしたらそんなに声が震えてる訳ない。
強がらなくていいから、頼れよ。お前はどうしたいんだ？
『ヒジリさま』なんかじゃない、神様なんかに頼らなくても、俺がお前の願いを叶えるから。」
俺が言い終えると、空蝉の目から一筋の涙が頬を伝った。
静かに涙を流す彼女をそっと抱き寄せる。
「ほら、言えよ。お前は、どうしたいんだ…？」
腫れ物に触るようにそっと彼女に問いかける。
すると彼女は涙で潤んだ目で俺を見上げて言った。
「…此処から、連れ出して。」
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りんてん - え、もう感動して涙がポロポロ...。 泣けました！素晴らしいです！！ (2019年10月25日 23時) (
レス) id: e2668604a6 (このIDを非表示/違反報告)
どこか村のだれかさん - 気づいたら読み終わってました！面白かったです！ (2019年9月9日 0時) (レス) id: 3706e8b566 (このIDを非表示/違反報告)
バニレ - とても面白かったです。更新待ってます。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 527198f7e6 (このIDを非表示/違反報告)
www - イエ―イ！面白いよ！相変わらず！ｗ (2019年8月26日 17時) (レス) id: bb2f701b11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：來（らい） | 作成日時：2019年8月25日 21時
