水が8L ページ8
「♪〜〜〜」
ブルックさんの繊細な演奏を聴き始めて、どのくらい経ったのだろうか。時間なんて忘れるほどに浸っていた。
この空間がずっと続けばいいのにと言うほど心地良く、自然と瞳を閉じていた。
「ところで、Aさん。」
演奏が終わり、こちらを向きながら真剣な表情で声をかけられ、少し肩を揺らしながら目線を向ければ話し始める。
「パンツ見せて貰ってもよろしいですか？」
『ごめんなさい。私戻りますね』
この船に乗っている、女性全員に言っているこの言葉。
もはや慣れてしまい、軽くあしらうまでに至る。
ゆっくりと席を立ち、残りの掃除をしようと歩き出せば焦った様に戻ってきてと言われ、渋々戻る。
「私…美人に目がないんです！！…ガイコツだから目はないんですけども！！ヨホホホホ！！」
『知ってます』
苦笑いをしながらそう答えてみれば、そうですよね！とニコニコ笑顔で返される。
「……」
『……』
空気が重い。
お互い中々、話す機会も無くこうして対面で会うのは片手で数えられる程度。
どうしようかと悩み始めた時、ブルックさんが口を開く。
「Aさんは、ルフィさん達のこと好きですか？」
『え？勿論、好きですよ。』
頭にハテナを浮かべたまま答えれば、「私もAさんのこと好きですよ」と微笑み返される。
何だかそれが心に染みて、じんわりと暖かくなってくる。
「こんなに手が荒れてしまう程、私達のことを思って掃除をしてくださって。」
「洗濯もそうです。Aさんには、感謝してもしきれない。」
「Aさんは、優しい。優しすぎるくらいです。」
慣れた手つきで私の手を取り優しく荒れた部分を撫でていくブルックさん。
彼の顔は、俯いていて分かりずらいが少し眉間に皺を寄せているように見えた。骨だから分かりずらいけど。
「ブルック〜！メシだぞ！メシ！」
「ええ！今行きます」
遠くから聞こえてくるルフィの声に、未だ私の手を離さず答える彼。ゆっくりと視線を手元に戻して息を吸う。
「もう少しですから。もう少しで、変わりますから。」
そう言って、私の頭に手を乗せる。
冷たいはずの真っ白な骨から伝わってくる暖かさと優しさ。
「風が冷たくなってきましたので、今日はもうゆっくり休んでください」
遠くなるブルックさんの足音。
それと同時に膝を抱えて顔を埋める私。
寒い筈なのに、今日は少し暖かい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1513人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パチュリー(プロフ) - ときたま忍者になる大根さん» その為、作中他の女性陣にもメロメロになっているシーンがありますのでこれといって特別恋愛感情がある訳でも描写している訳でもございませんが、今後の展開も含めてご自由にご解釈なさって頂ければなと思います。この度は、コメント有難う御座いました。 (6月11日 3時) (
レス) id: 319e9235c5 (このIDを非表示/違反報告)
パチュリー(プロフ) - ときたま忍者になる大根さん» 傷が何かしらで開いてしまった際に対応できるように”治るまでは、船にいて”の意味合いがあります。また、サンジは夢主の事は仲間という認識です。恋愛意識は無いですが、他の女性陣同様キャッキャさせております。 (6月11日 3時) (レス) id: 319e9235c5 (このIDを非表示/違反報告)
パチュリー(プロフ) - ときたま忍者になる大根さん» まず1つ目として、夢主は深い傷を背中におっています。傷もまだ治りきっておらず、海の中に潜り手を伸ばし力を入れるだけで傷が再度開いてしまう。というものを作中で表現させて頂いております。そのため、傷を負っている夢主から目を離さないように、 (6月11日 3時) (レス) id: 319e9235c5 (このIDを非表示/違反報告)
パチュリー(プロフ) - ときたま忍者になる大根さん» 御意見御感想をお寄せ頂き誠に有難う御座います。本編の拙い文で理解ができない部分が多々ありましたようで、大変申し訳御座いません。此方のコメント欄にてお答えさせて頂きます。 (6月11日 3時) (レス) id: 319e9235c5 (このIDを非表示/違反報告)
ときたま忍者になる大根(プロフ) - 夢主がみんなに嫌われていなかったというのはわかるんですが、それならなぜ外出させてくれなかったんでしょうか？あとサンジの夢主への態度がほかの女性とは違う気がするのですがこれはサンジが夢主のことを恋愛的な目で見ているからなど意味が含まれているのですか？ (6月10日 5時) (レス) id: 2086425a99 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パチュリー | 作成日時：2022年9月26日 0時
