9. ページ10
「まだ覚えきるのには時間がかかりそうです…」
十数人の自己紹介が連続でされたとなれば当然頭の中はごっちゃだ。さっきなんて「分かりました。宜しくお願いしますねコネシマさん」と呼びかけたら「俺ショッピです」って冷たく返されたからね。申し訳ないショッピさん。
「まぁ無理もない、その内分かるようになると思うゾ」
だろうなと言わんばかりの表情でグルッペンさんがフォローを入れてくれる。意外と優しいのかもしれない。…いやいやまだ信用は出来ないけどね。
「あ、その、グルッペンさん、1つお伺いしても?」
先程からずーっと気になっていた事を聞こうとおずおずと呼びかける。「なんでも聞くがよい」と快く受けてくれたグルッペンさん。なんか人の温かみに久々に触れた気がして涙出そう。
「ここの人達距離近くないですか?」
初対面でこの質問はアウトだと思うって?私もだ。私が1番アウトだと思っている。だが聞かずには居られなかったのだ。
「あー……」
彼が反応に困ってしまった。
やっぱり聞くべきじゃなかったかな。勝手に私が推測するに,彼の表情からして彼等は元々距離が近い生き物なのだろう。彼等の本能なのだ。そういうことにしよう。
「やっぱりなんでもないです,私大分寝てた感じなので今日のところは帰りますね」
一刻も早く帰りたくてあはは〜と苦笑いを浮かべて立ち上がろうとする私を彼は「まぁ待て」と制止する。
「今日はもう暗い。まだ本題も解決していない事だし,今夜はここの屋根の下で羽を伸ばしてみてはどうだ?」
恐らくきっと多分彼は善意のつもりで私に言ってくれている。だが全く羽を伸ばせないのだこんな所じゃ。羽を伸ばすどころかなんなら大動脈を掻っ切られそうでとても怖い。
「私一人で帰れますよ、お気遣いありがとうございます」
流石に泊まるのは怖くて,私は彼の目を見ながらしっかりと断りを入れた。私だってまだやらなきゃいけないことが沢山残っているし,呑気にここで泊まっている訳にも行かない。ましてやマフィアの家でお泊まりなんて命知らずにも程がある。私は早く保育士ライフを送りたいのだ。
「純粋そうなお嬢さんとはいえ,いつ警察に駆け込んで助けを求めてもおかしくはない。安心したまえ,取って食う様なことはしない」
赤い瞳が私を捕らえる。彼はただ座って話しているだけだというのに,足が動かなくなる程の威圧感があった。
「勿論,泊まっていくよな?」
224人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マスタード(プロフ) - わぁぁぁぁぁ好きです頑張ってください!! (2023年2月4日 19時) (レス) @page22 id: 939cd7d5e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:赤身肉 | 作成日時:2022年8月30日 20時