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にっこりと笑うグルッペンさん。その時私に向けられた笑顔は決して心からの笑顔ではなく,どことなく冷たい何かを隠し持っているような笑顔だった。
頷けよ,という圧が彼の部下達からも感じられる。
震えた呼吸をする私を見て,
「決まりだな。居心地の良い部屋を用意してやろう」
と今度は普通の笑顔で私に話しかけてくる。まだ頷いてないんですけどね。でも先程の空気も凍るような冷たい空間から逃れられただけマシだと思った。そう思えるくらいにあの場は異常だった。
グルッペンさん達が立ち去ると,思わず私はその場に座り込んでしまった。
───
「大丈夫っすか」
しばらく座り込んでいた私に声をかけてくれたのはショッピさんだった。私がコネシマさんと名前を間違えた人だ。
「いつまでもそこに居ったら掃除出来ないんで移動してもらえます?」
彼の言葉に弾かれるように立った私はそそくさとその部屋を出る。マフィアだから怖いっていうのもあるけど,この人言葉がちょっとトゲトゲしてる。
ドアの向こうは廊下だった。赤いカーペットが敷かれ上を見上げればいくつもの小さなシャンデリアが見える。壁には額縁が所々に飾られていて,あんまり私が理解出来ない部類の絵が収まっていた。
「すご」
ぽつりと私が呟くと,あとから面倒くさそうに着いてきたショッピさんが「こんなんも見たことないんやね」と嘲笑する。イラッときた私は彼の言葉を無視して廊下を歩いた。廊下はまっすぐ一本道。別にここなら道に迷って彼に笑われることも無い。
「俺,あんたの泊まる部屋準備してる間のお世話係なんすよ。置いて行かんといて下さい」
早足で歩いているつもりでも隣に追いついた彼は普通に歩いている。歩幅の違いがなんか更にムカつく。てかお世話係って何?私子供だと思われてる?…あ,私が逃げないように見張っているのか。理解理解。
「お世話される必要ないからどっか行ってていいよ」
私はここからの出口も知らないし穴掘って逃げ出そうとも思っていない。後が怖いから。彼にずっとネチネチネチネチ何か言われるより1人で歩いていた方がずっと良い。彼もそっちの方が良さそう。
「立候補までしたのにそんな投げやりなことせえへんよ」
「立候補してたの?こんなに消極的なのに?」
私が思わず食い気味に訊ねると,彼は不機嫌そうに私を見た。構わず歩いていると,彼が私の前に足を出してきた。私は気付かず転んでしまう。
「ださっ」
この男,腹立つ。まじで。
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マスタード(プロフ) - わぁぁぁぁぁ好きです頑張ってください!! (2023年2月4日 19時) (レス) @page22 id: 939cd7d5e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤身肉 | 作成日時:2022年8月30日 20時