愛を唄おう (ページ12)

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俺がAさんと会ったのは、高一の初め。バスケ部の体験入部の時だった。

男ばかりの部活の中で忙しなく動き回る小さな姿を見つけた。

その人は、誰よりも大きな声で部員を鼓舞して太陽のような笑顔を振りまいていた。

初恋、といえば聞こえはいいが俺はまんまと罠にハマったのだ。

俺を待っていたのは、死ぬほどキツい練習。

試合ならまだいい。けど、一年はボールすら触らせてもらえない。

ひたすら走り込みやら、応援歌練習やら。マネージャーのような事もさせられた。

俺の友達は、そこら辺で何人か辞めていった。

ただ馬鹿な俺は、Aさんに会うためだけにキツい練習を乗り切っていた。

唯一のマネージャーであるAさんは人気者で、一年の俺が相手されるわけもなく。ただ端の方でゴツい先輩たちの中心にいるのを眺めているしかなかった。

そんな俺が関われたのは、三年が引退した後だ。

「ねぇ、脇くん」

「え？俺、、すか？」

「ふふ、そうやよ。脇将人くん？」

そりゃあ、内心大暴れだよ。憧れの先輩から話しかけられて、フルネームまで知られてたんだから。

「なんで名前…」

「一年生って貴重やけん、みんなの名前覚えとるよ」

「あぁ…なるほど…」

少しがっかりしたのはここだけの話。

「一年生の皆に、新キャプが呼んどるって伝えてくれんかな？」

「え、、と」

「大丈夫、多分ええ事やから」

そう言って、太陽みたいな笑顔を向けられた。

新キャプから告げられたのは、一年生の数名がベンチ入りするという事だった。

その中には俺の名前もあって、思わず小さくガッツポーズをした。

ふと視線を感じると、Aさんが口パクで

“おめでとう”

そう言ってまた笑っていた。