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数分で珈琲が運ばれてきて、ほわほわと湯気をたてるカップの中からは珈琲豆のいい香りがした。
その香りに誘われるようにカップに口を付けて体内に珈琲を流し込むと、途端に口の中でも香りが弾ける。
舌の上に転がった味覚は甘さも控えめながら、繊細なものだった。
珈琲にしては爽やかな風味で、ミルクと砂糖を多めに入れないと珈琲を飲めない私でも美味しく飲む事ができるなんて凄い。
どこの珈琲豆使ってるのかな。
些細なことだけれど感動した私はカップを回しながら珈琲の表面を眺める。珈琲のいい香りが鼻をくすぐって、何だか肩の力が抜けたような気がした。
すると、先程の男性店員さんがセットのフルーツサンドをもってやって来たのが視界の端に映った。
「こちら、採れたてフルーツサンドです。こちらに失礼しますね」
彼は丁寧な物言いで運んできたフルーツサンドのお皿を卓上に置くと、ニコリと微笑んで私の方に視線を向けた。
その視線の意図がわからなくて、私はつい首を傾げる。
どうしたのかな?
「珈琲のお味にご不満などないでしょうか?当店では店長がお客様にあった珈琲を提供しておりまして、もし舌に合わない場合は交換するサービスも行っております」
『珈琲⋯⋯ですか。いえ、ピッタリです、びっくりするくらいに好みと合ってます』
好みというか、私の舌に合っている気がする。
砂糖多めで甘ったるい訳でもないのに弾むこの感覚、不思議だ。
リラックス効果でもあるかのように力んでいた肩の力は抜けているし、緊張したように固まっていた顔の筋肉もいつの間にか綻んでいた。
乱れていた心も落ち着いていて、冷えた頭の中にこれからの未来の事が思い浮かぶ。
「それはよかったです。では、お会計の際にこちらの伝票をお持ちください。ごゆっくりどうぞ」
彼は軽く会釈すると、奥へと戻ってしまった。
⋯⋯ここのお店、寄ってよかったな。
ごちゃごちゃになってた頭の中とか、心とか落ち着いた気がするし、何よりも未来に少しだけど希望が見いだせた気がする。
ひっそりと笑顔を浮かべて、私は店内で流れる音楽に身を任せるようにして目を瞑った。
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彩花/ayaka(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2022年8月18日 9時) (レス) @page28 id: cbcf5b3031 (このIDを非表示/違反報告)
或世(プロフ) - 更新もう無いですか??? (2022年1月10日 23時) (レス) @page28 id: 8e7d4db9f1 (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 初見です!あの…途中泣きました(っω<`。)そらるさん…(泣)ずっとそらるさんだけ残っていたんだ…やっぱりそらるさんは優しいな(っω<`。) (2021年12月27日 1時) (レス) @page28 id: 627a75f878 (このIDを非表示/違反報告)
半チャーハン大盛りで - 続きがめっちゃ気になりはる…更新もうやめてしもうたんかな…? (2021年12月20日 23時) (レス) @page27 id: f51034a641 (このIDを非表示/違反報告)
霧雲@こたぬき - 何度見てもええ話やなぁ、泣ける。。。続き楽しみにしてますねぇー!(関西弁続きだとは・・・) (2021年9月26日 1時) (レス) @page27 id: d5c18e25b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュリンク&starlily x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月6日 0時