*Snow falls 【浦/島/坂/田/船】

8話# ページ8

.





先輩になんか言いました？と問いても、もう一度言ってくれることはなかった。


(みんな、好きか…)



いつかその言葉が俺を対象とした言葉に変わってくれはしないだろうか。みんな好きなのは俺もだ。先輩方にいつも笑顔をもらったり、元気を貰っているし。だから、みんな嫌いになれなんて言わない。友達としての好きで踏み止まってほしいのだ。



先輩方は優しいし、面白いし、格好いいから校内でも結構な有名人さんだ。志麻先輩なんか、去年のバレンタインはお菓子好きなこともあり、大量に持って帰ってきた。


ぼうっとしながら弦をつーっとなぞりながら、周りを見つめる。


｢ちょ、キーボードまた負傷したわ…｣

｢えー、また私が直すのか｣

アイス奢れよ、とちゃっかりしてるA先輩に、素直に謝って助けを求める坂田先輩。アイスは頂くといってキーボードを直そうとする志麻先輩。


｢アイスぐらい奢ったるから｣

｢ほんとに？！｣


嬉しそうにその話題に飛び付く先輩。センラ先輩は上手くいった、というようにしめしめと言いながら笑っていた。


(ほんとに、腹黒いな)


だけれど優しい。腹黒さは優しさでかきけされるのだから、センラ先輩にとって利益が出るだろう。



こうやって、先輩方はどうにか二人になろうと作戦を練っている。完全に思い付きなものが多いけれど、鈍い先輩を振り向かせる為にはまだまだ足りないだろう。



｢あ、A先輩｣

｢浦田くん、どうしたの？｣

｢なんでみんな私と仲睦ましくしてくれるんだろうって言いましたよね。



僕たちも、先輩の事が大好きだからですよ｣



笑顔で先輩の前から立ち去ると、後に成る程という大きな声が聞こえた。


｢バラさんといてえや｣

｢あれぐらい言っても足りないですよ、先輩｣



現に勘違いしてるし、と呟くと苦い返事が坂田先輩の口から出た。

9話＊→←7話＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す