財前光と出会ってから付き合うまで

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初めて見た時、衝撃が走った。


その日は、テニス部を見にテニスコートへ行った。
私は小春ちゃんと一氏のネタが好きで、たまに見にいっては勝手に笑わせてもらっている。今日も笑わせてもらおうと、向かった先で彼を見つけた。

これからダブルスの試合をするようで、白石くんと謙也が片方のコートで準備をしていた。
ベンチでは小春ちゃんと一氏がいつものようにいちゃいちゃしていて、時折周りに投げキッス等をし、一氏に怒られる、といつもの流れだ。
ふふ、とつい笑い声が漏れた。
二人と試合するのは…と反対側に目を移すと、小石川に、…？

その時目に止まったのが、彼だ。

周りと比べると小柄で、多分新入生だろう。
彼は、綺麗な濡れ羽色の髪色をしていた。
流した前髪に対し後ろはワックスで立てており、そこから覗く耳にはピアスが5つもあいていた。右に2つ、左に3つ。赤青黒黄緑。

なんて目立つ色なん…何でその色にしたん…オリンピックが好きなん……

いや、そんな事どうでもいい。
そんな事より。
……彼は、笑ってないのだ。微笑みすらしていない。

どうやら彼はテニスコートに来る前にも、テニス部レギュラーそれぞれにギャグを披露されたがその時も一切笑わなかったらしい、という話が聞こえてきた。
そんな人もいるのかと驚いていると、審判の声が聞こえてきた。
試合が始まるみたい。

そういえば、いきなり1年生に白石くんと謙也を当てるやなんて厳しいんやないかな。
白石くんは2年生で部長になるくらいやし、謙也だってスピードスターなんて二つ名がつく程やん。

なんでそんな2人と、なんて考えていたら。

「15-0(フィフティーンラブ)！」

「えっ？」

審判の言葉に、思わず声が漏れた。
見ていると、ほとんど、というか全部の球を1年生が返している。後衛の小石川はボールに触れてない。

＊

気付くと試合は終わっており、オサムちゃんの「天才や！天才財前くんや！」という声が聞こえてきた。

財前て名前なんや。

しかも聞こえてくる話によると、テニスは今までに1.2回しかしたことがないって。漫画みたい。

そんな事、ほんまにあるん？

鞄に入れていたスマホが震え、我に返る。
画面を見ると「今どこ？」とlineがきていた。

そうや、一緒に帰る約束をしてたんやった。ちょっと覗いたらすぐ行くつもりやったのに。

昇降口に向かいながら画面をスライドし、電話をかける。

「もしもしごめん今から行く！てかめちゃくちゃ聞いてほしい事おきた！」

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