その7 ページ7
「忍びさんは、普段なにをしているんですか？」
私が座る布団から少しだけ距離を開けながら、五虎退と名乗ったその男の子はポツリポツリと私に質問をしていった
「普段...普段は普通に暮らしてますよ。」
「えっ、手裏剣とか使わないんですか？忍法とか...」
わたわたと身振り手振りで色々やってみせるその子は可愛らしかった。
こんなに気持ちが緩んだのは、いつぶりだろうか。
毎日民衆の中にまぎれ込み情報を聞き出し、それを仲間に伝達をしてはまた民衆にまぎれ込む。
そして材料が揃えば仕える主に全てを差し出し、時には敵方の大将の暗殺をする。
常に気が抜けない毎日だった。
だからこそ、なんとなくこの時間が終わってほしくないと無意識に思った。
話もひと段落したところで、私は彼にこう言った。
「もう遅い時間になるので、床に就いたほうが良いですよ、また....」
また、明日。
自然にそう言ってしまうところだった。
私たちには、明日もこうやって呑気に話をする時間は無い。
「忍びさん？どうかしましたか？」
「なんでもないです。お話をしてくださってありがとうございました。
おやすみなさい」
「はい、また明日！」
あぁ、言われてしまった。「また明日」と。
彼が去った後で、静かに呟いた。
「また、今度。」
.
.
.
「おーい鶴丸、忍びの子呼んできてくんない？」
加州にそう言われて、俺は忍びの娘がいる部屋へ向かった。
「どれどれ、どんな寝顔が＿＿＿うおっ！？
君、まさか一晩中起きてたのか...？！」
部屋へ入ってみて驚いた。昨日からまるで表情が変わっていなければ寝癖もついていない。
「おはようございます、昨日はお世話になりました。」
「いや、まあ俺は特にお世話はしてないが...」
「私はもうここを出ても良い頃合いでしょうか？」
彼女はそう言うとゆっくりと布団から立ち上がる。
足首には血の滲んだ包帯が巻かれていた。
「なぁ、まだ傷が痛むんじゃないのか？」
「これくらいは慣れていますし、昨日よりは随分とよくなりました。
それに、このままここに居るわけにもいきませんから。」
少し顔を伏せながらそう言った。
「そうか、朝餉を用意したからせめてそれくらいは食べて行ってくれよな。」
「いえ、申し訳ないですがそれは...」
「俺の作った飯が食えないっていうのか」
「......では、少しだけ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 198人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にわ | 作成日時：2020年2月7日 19時
