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その14 ページ14

「あの、一兄...少し山に行ってきても良いですか?」




もう夕餉も食べ終わり皆が団欒をしている中、五虎退が一期一振の元へそう尋ねてきた。





「山へ?何をしに行くんだい、こんな時間に...」


「虎くん達のお散歩です、昼間は内番があってできなかったので」


「そうか、じゃあ私も一緒に__」





一期がそう言って立ち上がろうとすると、酒に酔った鶴丸が絡む。





「おいおい一期ぉ、ぜんぜん酒が減ってないぜ〜」


「鶴丸、離れてください。」


「あ、あの、一人でも大丈夫ですよ、虎くん達もいます」


「すまないね五虎退、気を付けて行ってくるんだよ」


「はい!では行ってきます」





一期が鶴丸の脇に拳を入れるのを見届けながら、五虎退は本丸の玄関へ向かった。





.
.
.




「やっぱり無いなぁ...どうなってたんだろう、あの建物は...」





足元の悪い山道を歩きながら溜息をつく。

あの建物は一向に見えるてくることが無く、途方に暮れていた時__







「うっ、うわぁぁっ...!

だ、誰かいませんか!?」






ガサガサという草を踏みしめて走る音と一緒に、なんとなく聞いたことのある声が耳に入ってきた。


すると、声の主が草むらからドサッと転がり込んでくる。





「ん...?あれ、君は...」




「うぅ.....。あ、忍びさん!!

助けてください!」





確か”五虎退”と名乗っていたその子は、私を見るなり泣きながら飛びついてきた。






「ど、どうなさったんですか__」






彼の震える肩に優しく両手を置いた瞬間、その背後に大きな影ができた。






____熊だ。

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作者名:にわ | 作成日時:2020年2月7日 19時

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