我が主はわがまま姫【巴日和】 (ページ15)

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14話ページ15

side日和

初めて聞いたAからの拒絶の言葉だった。

日和「そんなに僕に話したくないことなんだね」

僕の問いかけには答えないけど表情がそれを物語っている。

日和「ごめんねA。僕が悪かったよ」
「え、日和さんの謝ることでは……」
日和「僕は少し、自惚れてたみたいだね」

君は僕から絶対に離れないと思っていたから。

日和「乱暴にしちゃったね。帰ろうか」

Aの肩から手を離し前を歩く。
Aは僕の後ろについてくる。
いつも通りのこと。
なのに、その距離感が辛くなった。

それはきっとAが別の男の元へ行ってしまうかもしれないという不安なんだろう。
Aが燐音先輩に靡くとは思えないけど、今日で距離が縮まったのは間違いない。

日和「A約束しようね」
「何を、ですか？」
日和「君に好きな人ができたら教えて」

応援は出来ないかもだけど、君を手放すことくらいは僕にもできるはずだから。

「好きな、人……ですか？」
日和「そう。女性の夢には花嫁になるってのがあるからね。……僕の従者を続けて婚期を逃すようなことがあってはならないからね」

複雑な感情が表に出ないように笑ってみせる。

日和「君が選ぶ男性はきっと素敵な人だろうから」
「あの、日和さん……」
日和「僕は寮の方に帰るけどAは？」

Aの言葉を聞きたくなくて遮る形で話を変えた。

「あ、私は事務所の方に……」
日和「そう。じゃあここまでだね」
「あ、はい。お疲れ様です……」

オドオドしながら頭を下げて行ったAの後ろ姿を見守る。

日和「……Aの好きな人は僕じゃないんだろうな……」

僕であればいいのに。
僕であれば……。

日和「……君を絶対手放したりはしないのに……」

僕の声は冬の夜に吸い込まれるように消えた。