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宮侑は、興味津々だった。
他人との干渉など必要ない、というように佇む彼女が一番クラスで目立つこと。
それから、心通わせられる仲間なんて
ここ数週間で気づいたことは、彼女にひとたび話しかければ会話の中身がなんであれ思考を忘れず丁寧にかつ簡潔に返答をすることだ。
「バレー部、見学行ってもいいかな。」
「……!」
それでも奥底にある心の扉は閉められてる気がして、掴めない彼女をどうしても手中に収めたい。
「ええよ、今日放課後すぐ行こうや。」
「うん。」
席へ戻るAは、机の中から次の授業の準備を取り出す。
侑はその一挙一動をまじまじ見つめる。
視線に気づいたAは侑の方を見ずにピタリと動きを止めるが、諦めたように溜息をつき席を立った。
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「お前、変な噂流れとるで。」
4限の体育。
1組と2組の合同で男女に別れて体育館でバスケの試合する。
それ眺めて休憩する侑を小突きながら言うのは治。
「噂?」
そんなもん気にせん、と腕を組み試合を見続ける。
「鹿島さん、やっけ。その子にめちゃくちゃ嫌われてるらしいなあ。」
「はっ?」
後方に立つ治の方を振り返り、焦りを見せる。
治はその様子を見て驚きつつもニヤニヤと笑った。
「嫌われたらいやな人間、おるんやなツム。」
「……この野郎、嘘ついたな!!!」
侑が立ち上がる前にキュッと体育館の床を蹴って走り出す治。
そのあとを眉間に皺を寄せ、凄まじい剣幕で追いかける侑は体育館中に響く声で治の名前を叫ぶ。
「おい、宮兄弟!!授業中やぞ!」
体育教師の声も虚しく、治に飛びついた侑が体操服の襟元を掴んで問いただす。
「なんやねんその嘘は!!」
「ツム!お前鹿島さんに引っ付きすぎできもいねん!自重しろや!」
「なんや!あいつバレー部入るんやぞ!仲良くしとって何が悪いねん!」
「うるさい、ツムがどうせ無理なこと言うとるんやろ!」
ぎゃあぎゃあと掴み合いの喧嘩はもう日常茶飯事で、入学してから数週間で学年の、いや学校の名物と成り果てていた。
「あいつら体育館やと、より白熱するな。」
「もっと近くで見に行こや。」
男子の野次馬が群がり始めてから、女子も双子の喧嘩に気を取られ授業が崩壊しつつある中、Aは遠巻きに眺めていた。

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もちもち(プロフ) - みりかさん» (´•̥ω•̥`)いつもありがとうございます!続編もぜひおって頂けると嬉しい限りです……! (9月4日 19時) (レス) id: f81301e636 (このIDを非表示/違反報告)
みりか - 爆泣きしました、、(´;ㅿ;`) (9月2日 18時) (レス) @page49 id: 2c07cb6f0a (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - TNさんさん» ありがとうございます!!お好みでよかった!! (8月24日 10時) (レス) id: f81301e636 (このIDを非表示/違反報告)
TNさん - とても大好物です!(?) (8月21日 12時) (レス) @page28 id: 062c590937 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - みりかさん» ありがとうございます!コメント励みになります!頑張ります! (8月20日 22時) (レス) id: f81301e636 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:keko184 | 作成日時:2024年8月12日 18時