栞-1- ページ48
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「お疲れ様。」
準決勝に敗れた稲荷崎は、3位の成績を獲得し表彰式を終えたあと会場のロビーの隅で軽いミーティングを行っていた。
ミーティングが終わると、他の部員がバスへと向かう中でAは忘れ物などないか確認と横断幕を外しにアリーナに向かった。
「クロ……」
「一日目から見に来てたけど、声かけるタイミングなかったわ。」
緊張の糸が解けたような顔をするAに黒尾は一歩近づく。
研磨は柱の影に隠れて二人の様子を伺っていた。
「私のこと待ってたの？」
「……キモかった？」
「あ、違う違う。」
研磨は大丈夫かと心配になりながら耳を集中させる。
黒尾は切り替えようと咳払いをして、視線を斜め上に投げる。
「あー……試合、惜しかったな。」
「うん。呆気なかった。」
「でも3位はすげえよ。頑張ったな。」
「うん、支えられてよかった。」
計5日間の試合を終え、張り詰めていた意識が解けていく。
体を動かした訳でもない自分自身の疲労を自覚していく感覚がAを襲っていた。
「……ちょっと、胸貸して。」
「……。」
黒尾の胸元に額をあてる。
ピクリ、と動いた黒尾の指先はまた行き場をなくしていた。
「楽しかった。めちゃくちゃ。」
「うん。夢中になってたの見てて伝わった。」
フー、と深いため息をついて黒尾の胸元から離れるA。
「クロ。好きだよ。」
シン、と静寂に包まれる。
体育館の外の声や物音がより一層聞き取りやすくなった。
黒尾は目を丸くしたまま硬直し、柱の後ろで盗み聞きていた研磨は喉元の音が聞こえてしまわないか体を強ばらせる。
「あの……ごめん、アドレナリンが出て、勢い半分で言っちゃった。」
「え……ああ、勢い」
黒尾は突然の出来事に動揺しながらも頭をフル回転させる。
待ち望んでいた言葉で、自分が伝えたかった言葉を放ったAを前に心が浮ついてもおかしくなかったが、思考を回すにつれて冷静さを取り戻す。
頬を赤らめ俯く目の前の愛おしい相手の全てを、受け入れる自信がない。
遠い場所、新しい環境、新しい仲間に囲まれたAの足枷になりたくない。
そんな言い訳が頭の中をぐるぐる回る。
「ごめん。」
咄嗟に出た言葉は思考を超え本能的に出た言葉だった。
何に対しての謝罪かは、この場面では明白で。
顔を上げたAの瞳からは光が消え、代わりに一粒の涙が頬を伝った。
「分かった。」
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もちもち(プロフ) - みりかさん» (´•̥ω•̥｀)いつもありがとうございます！続編もぜひおって頂けると嬉しい限りです……！ (9月4日 19時) (
レス) id: f81301e636 (このIDを非表示/違反報告)
みりか - 爆泣きしました、、(´;ㅿ;｀) (9月2日 18時) (レス) @page49 id: 2c07cb6f0a (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - TNさんさん» ありがとうございます！！お好みでよかった！！ (8月24日 10時) (レス) id: f81301e636 (このIDを非表示/違反報告)
TNさん - とても大好物です！（？） (8月21日 12時) (レス) @page28 id: 062c590937 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - みりかさん» ありがとうございます！コメント励みになります！頑張ります！ (8月20日 22時) (レス) id: f81301e636 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：keko184 | 作成日時：2024年8月12日 18時
