【東卍】他力本願 (ページ7)

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東卍を解散させたその日、志摩はマイキーと走りに来ていた。

「あっという間だったなー」

マイキーの後ろに乗れるのは志摩の特権だった。通称バブと呼ばれるバイクを操る彼の横顔がなんとも儚げで、今にも消えてしまいそうな、潰れてしまいそうな、強く凛々しくいて、何処か苦しそうな、そんなよくわからない表情をしていた。

マイキー君はよくやった。天下だって本当にとってしまう様な男だったから、圧倒的カリスマ性のある男だから、いつも皆んなの先頭に立って自分がしんどい時も皆んなの期待に応えて常にマイキーでいてくれた。

「お疲れ様っス。東京卍會初代総長さん」

マイキー君は皆んなの前で強く在らなくてはならなかった。

本当は小さい頃から愛用しているボロボロのタオルが無ければ一人で寝れない様な子供の癖に。そのカリスマ性に惹かれ着いていく奴等は数知れず、俺もその内の一人だった。彼は自分の放つ光が強すぎる故にその分闇も人一倍大きい男だった。
常に最強で、常に東卍を背負う総長として一番前を突っ走って来た。

だけどもう自分の好きだけで生きて良いんです。誰かの上に立ったり、先導する様なガラじゃないのにそのカリスマ性に惹かれた男達のために身を粉にしなくて良いんです。暴力からかけ離れた生活を送っても良いんです。

俺はマイキー君をただの男の子に戻したかった。普通に学校行って、笑って、彼女作って、家族を作って。
真一郎君、イザナ君、エマちゃん。一人取り残されたマイキー君に、俺が彼等の代わりになるしか無かった。

「じゃあな、A」

自宅の前で降ろしてくれたマイキー君。いつもならマイキー君家で解散なのに今日は何故か優しい。夕日に照らされるマイキー君が余りにも綺麗で、このまま何処かに行ってしまう、そんな予感がした。