鬼になった青年の話【胡蝶しのぶ】

地獄の柱合会議 ページ10

迎えた柱合会議、俺は襖の奥に潜んでいた。


炭治郎の声が聞こえる。

珠世さんの元にいた、鬼の禰豆子を連れた子だ。

隊士が鬼を連れていることに対して議論が行われている。

鬼になった俺もどうなることやら。



｢不死川、日なたでは駄目だ。

日陰に行かねば鬼は出て来ない｣



伊黒の声がする。

禰豆子が人を襲わない証明を示すため試しているようだ。

そして不死川が畳に上がる音が聞こえた。

ていうか目の前に、いる。


｢出てこい鬼ィ、お前の大好きな人間の血だァ｣


稀血。


襖越しながらに誘惑されそうになった。

ヨダレがでてきた、やばい喰いたい。


あああ駄目だ抑えろ馬鹿野郎。


折角お館様に任務をいただいて成果も出した。

こんなところで無駄にするな。



｢これで禰豆子が人を襲わないことの証明ができたね｣


禰豆子は我慢できた。


｢禰豆子と同じような境遇にある隊士がもう一人いる｣


みんな目を丸くしている。

そしてAは襖を開けて、フードを脱ぎ皆に視線を向けた。


｢！！！｣


目の前にいた不死川の血管が飛びてている。

構わずお館様の隣に立つと柱と炭治郎、隠の視線がAに向いた。


｢それが、雪柱の一宮Aだ｣


｢！Aさん…｣


炭治郎が悲しそうな目でこちらを見ていた。

1週間ぶりに見たけど怪我酷いな。


｢鬼になりました｣ニコ


なんで俺はこんな時に微笑んでるんだろう。

バカなのかこいつと思われてるだろうな。


ああそうだよ馬鹿だよ。

鬼舞辻に勝てると思って挑み腕を無くし大怪我をして死にかけ、挙句の果て鬼になっちまったんだから。


｢その地味な服！あの鬼はAだったのか！｣

｢そういえばAは浅草の任務に行っていたな！｣

｢その時に鬼にされたというのか。南無…｣

｢Aさん、鬼になってもかっこいいね｣

｢ほんと……かっこいいわ！！｣

｢おい時透、甘露寺、見惚れてんじゃねェ！｣

｢こいつは鬼になってもヘラヘラしているのか。間抜けなやつだ。本当にどうしようもないやつだな｣ﾈﾁｯ

｢……｣


冨岡はいつも通り黙っていた。

しのぶも俺の顔すら見ておらず、下に視線を向けたままだった。



｢鬼舞辻によって、鬼にされたんだよ｣



お館様はやっぱり穏やかだ。

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